カウンセリングルームから見える風景
輝きをつかまえろ

こんにちは。
香港でカウンセラーとして働いている藤森です。
私は、カウンセラーとして、日々たくさんの方にお目にかかります。

待合室でお目にかかった時から、期待でいっぱいの方もいらっしゃいます。
目がキラキラとして、新しい自分になるための期待と希望が、身体全体からあふれているように感じられます。テンションが上がって、ふわふわと体全体が浮いてくるような感じをするときもあります。

また、戸惑いや心配が感じられる方もいます。
どこから話していいのかわからない。
どうしていいのかわからなくて途方に暮れてしまう。
そんな感じが、話を進めるにつれて、フロアから、ひたひたと立ちあがってきます。

あるいは、ご自身の生き方に、自信があって、滔々とご自身の信念や生き方について、お話をされる方もいらっしゃいます。お話を聞いていて、目の前に岩やブロックが積みあがっていく、カサと重量が増して膨れていくような、感じがします。話す声は聞こえるけど、ご本人が見えない…と、感じます。

いずれにせよ、カウンセリングに来るにあたって
① 今までうまくやってきたけど、そのやり方が通用しなくなってきたと感じている。
② 自分で考えたり、身近な人に話していても、解決しないことがある。
③ 現在の状況がつらい。なんとか変えたい。
などが共通した理由としてあげられます。

セッションでは、ご本人から、じっくりお話を聞くことがとても大事です。
ただ、そこにとどまっていては、ご自分では見えにくくなっているループから抜け出して、ご本人が求める次のステップに進んでいくことができません。

こんな時に私が、意識しているのが、「輝きをつかまえろ」というキーワードです。
私にとっての輝きは、その人自身の持つ、繊細さ、柔らかさ、温かさ、しなやかさです。素の部分の美しさと言ってもいいかもしれません。それがぐるぐると回るループの中から、チラリと垣間見える瞬間に、チャンスがあるのです。

ご本人は、困った気持ち、周りが見えなくなっているような感覚でいっぱいであったりするので、その輝き、その素晴らしさに気づいていないことがほとんどです。そこで、その輝きに、一緒に触れてみることを提案します。

「素晴らしいですね。もう少し、話してもらえますか?」
「素敵な笑顔が出ましたね。今、どんな感じがしていますか?」
「その光景を思い出して、ちょっと、味わってみることはできますか?」
「お話を聞いていて、私はこういう感じがします。それを聞いて、どんな感じがしますか?」

そこからループから外れ、流れが変わって、等身大の「その人」との付き合いが始まる気がします。これによって、周りの状況や期待されるあり方ではなく、なりたい自分、本当に自分が望んでいる状況へと話が展開していくことが多いのです。これが、本当に話したい内容にフォーカスされていく、セッションのターニングポイントになります。

そして、この「輝きをつかまえろ」は、私たちの実生活でもなかなか役に立つスキルだと思います。

私たちの周りにも、いろいろな方がいますね。
楽しい話、明るい話を好んでする人。もちろん、楽しい話に終始して、楽しく時間を過ごすのもいいでしょう。

心配事や悩み事を、よく話す人。心配事を共有しあって、親密さを感じるのもいいでしょう。

自分の信念に自信があって、滔々と自説を語る人。自分の信念を貫いて、そのまま走り続けていただくのも、ひとつです。

でも、相手が、あなたにとって、とても大切な人だったとしたら?
その人との関係を、より良いものにしたいと思えるような相手であったとしたら?
そんな時こそ、「輝きをつかまえろ」が役に立つかもしれません。

いつも、いつも、ハイテンションで楽しい話をしてくれている友達。でも、そんな彼女がふと、「お酒を飲みすぎてしまう自分が怖くなる」と胸の内を、話してくれたとしたら?その意外な一面、その繊細さは、輝きだと思います。いつものテンションやペースでなくても、「どうしたの?」「どのくらい飲んじゃうの?」と落ち着いて、次の言葉を待ってあげるのが、そのお友達との関係を進めてくれるかもしれません。

また、学校での様子を聞くと、いつも、いつも、心配事や不満を話すお子さんがいらっしゃるかもしれません。もちろん、その心配事を詳しく聞くのも、ひとつのやり方です。学校と連絡を密にして、事実の確認も大事でしょう。ただ、もしも、「今日の図工は、こんなことやったんだよ」「○○くんって、面白んだよ」など、お子さんの笑顔がきらりと光る瞬間があったなら、そこは輝きであり、ぜひ、つかまえに行きたいところです。

「どんなことやったの?」
「へー、それって、どういうこと?」
「どんな気持ちだったの?」

そんな会話から、お子さんの自信や楽しさが膨らんでいって、心配事も少し軽くなっていきます。心配事ばかりに注目しているお子さんのループから、すこし外れることができるわけです。本人の気づいていない、自分が好きなこと、楽しめることに焦点を当てなおしてあげることが、本人の自信を育ててくれます。

あるいは、あなたの職場には、自説を曲げない同僚がいるとします。自信満々に、自分の正しさを主張してばかりいる姿に、あなたは、聞きたくない気持ちでいっぱいになってしまうかもしれません。しかし、聞きたくない気持ちがでればでるほど、相手はしつこく説明をしてくるでしょう。ここで、いつものパターンを変えてみたら、どうなるでしょう?

「自分のやり方がしっかりあって、素晴らしいですね。何か協力できることがあったら、声をかけてください」と、笑顔で話を打ち切るのも一つです。相手を攻撃することなく、「私は、これ以上聞きません」と自分の要望を行動に移してみるのです。

あなたの提案に対して、「一人でできるから大丈夫」というかもしれません。
でも、そこに、少し驚いた印象があるかもしれません。一人でやらなくてはいけないと肩ひじ張っていたところに、あなたからのサポートを得ることもできるのだとわかって、素顔が垣間見える瞬間です。これも輝きの一つです。笑顔で会話を切り上げることができて、なおかつ、信頼感が残ります。

そして、「これをやってほしい」と頼まれたら、しめたもの。
相手の言うがままに要求を呑むのではなく、「私はこれであれば、協力できます」とこちらの要求を伝えて、どこで折り合うのかは相手に決めてもらうのが大事です。自説を曲げられるかどうか、折り合えるかどうかは、あくまでも同僚に努力してもらうのがいいからです。そして、そんなやり取りの中から、同僚にとっての、絶対譲れないポイント、少し譲歩できるポイント、心に響くポイントが見えてくるかもしれません。これらが、関係をよりスムーズにしてくれるヒントになります。

「輝きをつかまえろ」
どんな感想を持たれましたか?

それは、相手の発するいつもと違う繊細な感じに、焦点を当てることになります。大切な人との関係のために、一度、お試しいただけたらと思います。いつものあの人の、意外な輝きを見つけられるかもしれません。

 

 

Suomi Fujimori
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。

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