カウンセリングルームから見える風景
いいお母さんでいたいから

こんにちは。香港でカウンセラーをしている藤森です。
現在子育て中のママやこれから子育てをしたい方にとって、「いいお母さんでいたい」というのは、多くの方がお子さんに対して感じているお気持ちではないでしょうか。今回は、その素敵な気持ちが、豊かさであり続けられるような、そんなヒントをお伝えできたらいいなと思います。

さて、次の文章を読むと、あなたの中で、どんな感じがしますか?
~いいお母さんでいたいから~
いいお母さんでいたいから、子どものためには我慢します。
いいお母さんでいたいから、子どもの友達のママとは仲良くします。
いいお母さんでいたいから、自分のやりたいことは後回しになります。

この文章を読んで、「そうだよ、そういうものだよね」と言われる方もいるとおもいます。「正しいんだけと、なんかすっきりしない」と違和感を覚える方もいるでしょう。感想はないけど、読んでいるうちに、なんだか気持ちがしぼんできてしまった方もいるかもしれません。

実は「いいお母さん」像は人それぞれです。そして、その「いい」とされる基準も程度も人それぞれです。そして、漠然として色んな価値基準を含んだ「いいお母さん」像を満たすことが、当たり前に求められる雰囲気が世間にあります。本来はただ、子どもの幸せを想うだけの「いいお母さんでいたい」気持ちが、いつのまにか、世間でいうところの「いいお母さん」像とすり替わってくる。そんなところに、「いいお母さんでいたい」気持ちが、子どもを慈しむ視点から、世間でいうところの基準を気にしながらプレッシャーを感じさせる枠組みになってしまう気がしています。

次の2人の女性を思い浮かべて、共感するところはありますか?
Aさんのケース
「いいお母さん」を十分にできていないのではないかと感じているAさん。家事も子育ても、子どものための友達付き合いも一生懸命にしています。でも、いつも、疲れがたまっている。時々、家族に怒りを爆発させてしまったりして、「大切にしたいはずの家族に、なんでこんなことをしてしまったんだろう」と落ち込んでしまいます。

Bさんのケース
「いいお母さん」をしていない人を見ると、なんだか気になって仕方がない。批判の気持ちが湧いてしまうというBさん。子育ても学校行事の役員も、「子どものため」を合言葉にいつも頑張ってきた。子どものために頑張るのが当たり前なのに、それができない親がいることが正直言って、信じられない。「こどもが可哀想でしょう?」って言ってやりたい。でも、なんでこんなに腹が立ったり、気になるのか、わからない。

一見、正反対に見えるAさんもBさんも、実は、漠然とした「いいお母さん」の枠組みから、はみ出てしまう自分が気になって、もやもやしています。

Aさんは、「いいお母さん」な自分だけの生活の中で、自分自身の気持ちやニーズが押し込められてしまってつらさを感じています。押し込められた、気持ちやニーズが、怒りの形で噴出してきて、「私の気持ちも聞いてほしい」と訴えているようです。

Bさんは、「いいお母さん」の枠をはみ出ているでしょうか?一見すると、ぴったりはまって模範的であるように見えます。でも、枠にはまらない人が気になって仕方がありません。これは、心理学でいうところの、投影(プロジェクション)が起きていると考えられます。「いいお母さんじゃないなどの批判を恐れず、自分がやりたくないことは、やらない」など、自分の表層意識にとって都合の悪い考えをBさんは押し殺しており、それが他の人に映し出されているように感じている状況です。自分が認めたくない考えを、自由にやっている(ように見える)人がいると許せない気持ちになります。本来自分の中にあるけれど、認めたくない「悪い」部分を、他人の中に見てしまう状況です。つまり、他人が気になるのは、相手に自分の認めたくない願望や自分自身を見ているからと考えられます。

「いいお母さんでいたい」気持ちも、周りからの期待があることは、変えようもないことです。でも、私たちが気持ちよく生活をしていくために、ちょっとした工夫をしてみることができます。

先ほどの「いいお母さんでいたいから」に続きを書いてみるとしたら、いかがでしょう?

~いいお母さんでいたいから~
いいお母さんでいたいから、子どものためには我慢します。
いいお母さんでいたいから、子どもの友達のママとは仲良くします。
いいお母さんでいたいから、自分のやりたいことは後回しになります。

この続きは、あなた次第です。
思いつかない方のためには、ご参考までに例をあげてみましょう。

~いいお母さんでいたいから~
いいお母さんでいたいから、子どものためには我慢します。
いいお母さんでいたいから、子どもの友達のママとは仲良くします。
いいお母さんでいたいから、自分のやりたいことは後回しになります。
だから、とっておきの、この楽しみは譲れません。

~いいお母さんでいたいから~
いいお母さんでいたいから、子どものためには我慢します。
いいお母さんでいたいから、子どもの友達のママとは仲良くします。
いいお母さんでいたいから、自分のやりたいことは後回しになります。
だから、私は、自分を大切にします。

~いいお母さんでいたいから~
いいお母さんでいたいから、子どものためには我慢します。
いいお母さんでいたいから、子どもの友達のママとは仲良くします。
いいお母さんでいたいから、自分のやりたいことは後回しになります。
それでも、子どもがいてくれることが喜びです。

あなたは、どんな続きを書きましたか?
枠があるようでいて、ないのが「いいお母さん」。世間の枠からはみ出る自分を大切にしてあげられることも大切です。そして、世間の枠ぐみではなく、自分自身で、大切と思える基準を持っているのもいいでしょう。また、「子どもも大切、自分も大切」と思えるかどうかが、「いいお母さんでいたい」気持ちが、喜びでいられるか、プレッシャーに変わるかの分かれ道だと、私は思っています。あなたの素敵な想いに、喜びがありますように。

 

Suomi Fujimori
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。

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