カウンセリングルームから見える風景
バイリンガルとして働く

こんにちは。香港でカウンセラーをしている藤森です。
私は、英語と日本語、両方でカウンセリングをすることがよくあります。今回は、2つの言語を使って働くこと、バイリンガルとして働くことについて書いてみたいと思います。

バイリンガルであることは、2つの言語を、その場の状況や相手のニーズに合わせて使い分けてコミュニケーションをすることです。私の場合、国際結婚の家庭へのカウンセリングでは、ひとつのセッションの中で、相手と状況に応じて日本語と英語の両方を使って、ご相談に乗っていくこともしています。また、クライアントの方が日本人であっても、お子さんの通う幼稚園や学校とのコミュニケーションに難しさを感じている時に、先生との話し合いに、英語で参加してお手伝いすることもあります。そして、セッションの中で英語を話さなくとも、外国語で生活する大変さについて、お話を聞くこともあります。

「さぞかし、英語が得意なんでしょうね?」と言われることありますが、英語にもどかしさを感じることは、まだまだ、たくさんあります。でも、ネイティブのようにしゃべって見せる必要はなく、「わかりあうためのツール」として、コミュニケーションを明確にすることを目的に英語を話すことを心がけます。ですから、セッション中に、わからない単語を耳にすれば、「それはどういう意味ですか?」と尋ねて確認するようにしています。そして、それが、クライアントの方がどのような思い入れをもって、その言葉を口にしたのかを掘り下げる機会にもなり、思わぬターニングポイントになることもしばしばです。

そんな私がバイリンガルとしてお仕事をもらえるというのは、自分が何者であるかという軸足はしっかりありつつも、他の文化も尊重できる、異なる文化や立場を相対的に見ることができるからだと思います。つまり、バイリンガル・カウンセラーとして役に立つのは、英語と日本語の2つの言語を話すだけではなく、むしろ、2つの文化を相対的に理解するバイカルチュアルである能力が、とても役に立っているのです。

たとえば、日本人の妻と欧米人の夫が、「夫婦のコミュニケーションをよくしたい」とカウンセリングにいらしたとします。妻は、「夫を見ているだけでイライラしてきて、ついつい口調がきつくなってしまう」と言います。夫は、「子どもができて以来、妻は私に対して拒否的になっている」と言います。セッションでは、日本独自の子育て習慣の是非、お子さんがどの学校に通うのかが話題としてあがってきます。

しかし、私は、どちらが正しいとか、どうするべきであるか等のアドバイスはしません。むしろ、話し合いをしたいのに、できないのはなぜか。夫婦のコミュニケーションに課題があるとすれば、それは何なのかを探って、落ち着いて話し合いをする場を提供できるようにお手伝いをしていきます。

たとえば、親しい間柄になればなるほど、自分の希望、愛情をどんな風に感じたいか、何が辛いのかなどの柔らかい気持ちは、なかなか意識されにくくなります。もちろん、言葉として表現されにくくもなります。そして、「こんな簡単なこと、そばにいたらわかるでしょ?」と無言のうちに相手に理解を求めていることが多々あります。こういった、語られないからこそ問題になっていることを、クライアントのペースに合わせて、意識を向けてもらい、コミュニケーションの俎上に載せていくことが私の大切な役割になっていきます。そして、中立な立場から距離を持って眺められること、タイミングを逃さず課題をつかまえて、どのように変えていけるのか提案していきます。

また、ファミリーカウンセリングでは、それぞれのニーズを持つ家族の方たちの、それぞれの立場を分かったうえで、家族全体を見ることが求められます。それでいて、誰にも肩入れせず、独立した立場で、お手伝いをすることが必要です。そんな時にも、一人一人の世界観や達成したいことをくみながらも、自分の軸足がぶれないように踏ん張っていくことが何よりも大切なことになります。

実は、この軸足をしっかりさせつつ、多様なものを同時にとらえて、問題解決にあたる力は、外国語学習、特に、幼児期から始めるバイリンガル教育にもつながるところです。私は、バイリンガル教育で一番大切になるのは、母語そして母文化に触れる機会を保障してあげることだと思います。母語は、その人が一番負担なく使えて、能力を最大限に発揮できる言語です。母語と母文化は、その人が一番自信をもっていられる、大切な人とつながれる、そして情緒的な帰属感を感じる大切な拠り所になっていきます。この母語であり母文化が、多様な世界で行き来しながら、軸足を失わずに機能していくための大切な基盤になるのです。

香港で子育て中のママは、バイリンガル教育に興味を持たれている方も多いと思います。そして、そのための幼稚園、学校選びにも頭を悩ませていらっしゃると伺います。ご家庭によっては、バイリンガルどころでなく、英語はもちろん、普通話、そして、広東語の習得を迫られるのが、香港の教育環境の現実です。そんな環境だからこそ、大切になってくるのは、以下の内容になってくると思います。

①    親が言語の優先順位を決めて、母語と母文化を学ぶ機会を保障してあげること、
②    本人の資質をきちんと見きわめること、
③    周りの大人が方針を同じくして、協力体制を組めることです。

近々、バイリンガル教育についてのワークショップを行う予定です。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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fujimori

Suomi Fujimori
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。

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