カウンセリングルームから見える風景
セックスレスはいけないの?

こんにちは。香港でカウンセラーをしている藤森です。

カウンセリングでは、夫婦関係についてお話されたい方がたくさんいらっしゃいます。その中で、セックスが話題になることも多々あります。皆さんから積極的に話題にしたいというよりは、「私はしたくないけど、あっちはしたい」とか「求めているスタイルが違うので悩みになっている」とか、不一致が起こっているために、話題にならざるを得ないというのが実情です。

往々にして、女性の方に「子どももできて、もう今さら恋人同士とも思えないし、もうしなくてもいいんじゃない?」という消極派が多くみられます。その一方で、男性はそうでないところから、問題が出てきます。これを「個人の性欲の問題、あなたの性欲はあなたが処理してください」と消極派の意向が通って、一見問題が治まったかのように見えても、結局、子育てや浮気など、違うところに問題が飛び火していることもあります。また、「僕にとってセックスは愛情表現として必要なことなのに、そこが満たされない結婚生活なのであれば、別の相手を見つけます」と夫婦関係自体が大きく揺るがされる事態になることも多く目にしてきました。

私の方から、すべきであるとか、そうでないとか意見することはありません。ただ、問題を整理するポイントとして話題提起をして、ご夫婦で考えてもらう機会としています。

話題提起①

「今回はセックスが話題であったが、双方のニーズが満たされない時に、どうやってギャップを埋めていくのかが問題。今までは、どんな風に問題に対して取り組んで、どう処理しがちであったでしょうか?」

このような話題提起の中から、「セックスをしないということで相手をコントロールする、相手への仕返しをしている」という構図が見えてきたご夫婦もいます。また「生理的に受けつけない」との感覚の中に、出産の時の気持ちの傷つきがあった方もいらっしゃいました。これらの根本にある傷や不適切なコミュニケーションスタイルがある場合には、そこから取り組んでいくことが必要です。

話題提起②

「夫婦単位の関係が薄くなっているための一つの現象として、セックスレスを考えた時、それが家族全体に及ぼしている影響、これから及ぼすであろう影響について話し合っていく」

家族の構造を多元的なシステムとしてみていくことで、全体とのバランスや健全さを最適にしていくこともできます。たとえば、母と子をひとつのシステムとしてみた時に、父と子、母と父(夫婦)それぞれのシステムとのバランスはどうであろうか。お母さんが子育てを一気に担っていると、往々にして、母子のシステムは強固で、勢い、外に対して閉じていくことが起こりがちです。それによって、母子の関係が過剰なものになったり、父が子どもの生活から阻害されていくことも考えられます。システムという単純化された図式の中で考えると、日常のこまごまとした課題のヒントが、大局的に見えてくることもあります。その結果、セックスレスが、全体のバランスの崩れを表している一つの現象でもあるのです。

そして、母子の密着と父の不在は、実は前の世代にもさかのぼっていくこともできますし、次の世代の子育てにも影響していくことが見えてきます。セックスレスは「性欲は自分で処理してください」というレベルのことではないことが見えてきます。

問題提起③

「そもそもセックスってなんだったんだろう?いつから、こどもを作るための作業になってしまったんだろう?」

特定の生殖期を持つ他の動物とは違い、人間のセックスは自由度が高く、その分、難しくなったとも言えます。生殖を目的としないなら、それは何なのであろうか。してもしなくてもいいはずなのに、なぜこんなに不自由さを感じている人がたくさんいるのでしょうか。

お互いにとって満足の高いセックスが成り立つための要素として、適度な安心感、動物的な本能に基づいたアグレッシブさや遊び心が必要だと聞いたことがあります。そして、これらが、毎日の生活に追われている夫婦の間には、なかなか取り戻すことが難しいのです。特に、長年の結婚生活の中で生じた未解決な傷、子ども自体に受けた傷つきの再燃、毎日の疲れでガチガチにかたまった身体には、あったかどうかも思い出せない、遠い記憶になってしまうようです。

問題的への答えに正解はありません。どんな答えも、その人の中から出てきたものであれば、それがその人にとっての真実であると敬意をもってお話を聞かせていただきます。そして、そのきちんと話された、誰かに受け止められた経験から、多くの方は自分がどうしたいのかを見つけていかれるように思います。

 

Suomi Fujimori
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。 http://www.suomifujimori.com/

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