—035— 期末テスト

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

香港では小学生のうちから期末テストがあり、香港に在住していた頃は長男の「中文」テストなどは私がヤマをはって試験勉強を一緒に行っていたが、日本の小学校には期末テストがないため、どうしても理解できない宿題が出た時以外は、あまり子どもの勉強を家でサポートすることはなかった。毎学期末に学校から持ち帰ってくる成績表もさっと目を通すだけなので、得意な科目と苦手な科目を把握する程度だ。しかし今回中学二年生の長男が初めて「今回の期末、理科が絶望的」と暗い表情で言うので、本腰を入れて手伝うことにした。
 私自身が文系なので、数学や理科は得意でない。テスト範囲のノートやプリントを確認してから、インターネットを駆使してまずは自分が理解することに努めた。ある程度理解したところで、簡単に噛み砕いて説明する。練習問題が並ぶプリントをテスト前日の夜8時過ぎから親子で一つづつ解いていった。問題を解き、答え合わせをし、間違えた箇所の説明を読み、理解できれば二人でハイタッチして喜んだ。プリントの問題をすべて解き終えたのは24時近くだったが、長男の表情からは不安が消えて、自信さえもうかがえた。
 翌日、長男の帰宅を心待ちにしていた。どんな顔をして帰ってくるのか楽しみだった。そして、長男は静かに帰ってきた。何も言わずに自分の部屋に向かい、カバンを置く。私は恐る恐る「どうだった?」と尋ねた。ドキドキしている私に彼はしばらく何も言わない。そして、にっこり笑って振り返り「簡単だった」といたずらな表情で答えた。私はガッツポーズで「やったー!」と叫んだ。
 テスト結果が返却された日、彼は帰宅後すぐに私のところに駆け寄ってきて、「理科がクラスで4位だった!」と報告してくれた。相当嬉しかったらしく、興奮冷めやらない様子で、クラスメイトの得点や先生にかけてもらった言葉などを何度も繰り返し話してくれた。私は「本当は理科も苦手じゃないんじゃない?一夜漬けでこんなに点数が取れるなら、理数系もやればできるよ、きっと」とおだててみた。この成功体験が学習意欲の向上につながってくれるといいなあと思いながら。

 私は受験のための勉強を子どもに強いることに違和感を感じてしまうので、義務教育の間は広い分野を学習する中で、基本的なこと以外は得意不得意や好き嫌いを見極めるだけでいいと常々考えていた。長男は語学や音楽が得意なので、将来的にはそちらの分野に進んでいけばいいと思った。故に苦手分野に関しては、平均点が取れたらよしとする方針で今まで来た。今回、テスト前にきちんと勉強することで苦手な理科も意外なほど点数を伸ばすことができ、彼の将来に新しい選択肢の可能性も感じた。固定観念に縛られることで、子どもの可能性を狭めかねなかったなあと反省する。ささいな出来事から、親が学ぶことも多い。成長を続ける子ども達との生活は、新しい発見も多く、私自身をも成長させてくれるんだなあと改めて感じた。