—009— 勝つのはどっちだ

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている。

日本でも小学3、4年生になると、塾通いする子どもが増える。家でテレビばかり見ている次男に「公園で遊んでおいでよ」と言うと「友だちが来なくなったもん」と言う。今まで一緒に遊んでいたお友達の多くが、すでに塾に通っているらしい。我が家のメンバーは塾に通った経験がある者がおらず、「塾」というものに若干の抵抗感がある。「テレビ見るくらいならレゴで遊びなさい!」とあえて勉強とは別のベクトルに持っていこうとしてしまう。

香港にいた時も似たような経験があった。長男が小学校に上がると、近所の公園に同じ年頃の子どもが来なくなった。スクールバスを降りて公園に直行する毎日だったのだが、気が付けば公園には幼児しかいない。不思議に思ってローカルママに聞くと、勉強に忙しくて遊ぶ時間がないとのこと。日本よりも教育熱心な香港では、小学校入学前からすでに競争が始まっていたのだ。なんだか複雑な気持ちになった。

ご存知の方も多いと思うが、ヨーロッパなどでは教育環境が東アジアと少々異なる。帰国後知り合った知人のイギリス人は、日本では小学生でも塾に通っている状況に驚いたと言っていた。イギリスでは小学生には宿題さえもあまり出ないらしい。

子ども時代の過ごし方に関しては、人によって意見が大きく異なる。将来に備えて早いうちから準備した方が良いと考える人もいれば、子どもはいっぱい遊んだ方が良いと考える人もいる。テクノロジーの進化のスピードが速すぎて、子ども達が大人になった時代の世界を想像することが難しくなった。AIがどのくらい人間の仕事を奪うのか分からない。地球温暖化の影響は?世界の国々はナショナリズムに進むのか、グローバリズムに進むのか?難しい課題がてんこ盛りだ。私たちが子どもだった時代は、未来は希望に溢れていたけれど、今はそうも楽観視できない。

子ども時代に遊ぶ時間を犠牲にしてがんばった者が将来勝つのか、いっぱい遊んで活力を養った者が勝つのか、確実な答えはない。ただ、未来はますます勝者と敗者が顕著な社会になりそうだ。

私の個人的な考えは「今を生きる」だ。幸せな時間を積み重ねていきなさいと教えている。目標のために努力することも、それに見合う結果を手に入れることも幸せだ。決して自分の気持ちを殺さずに、自分で考えて自分で決める。豊かな心が育っていれば、厳しい世界をサバイバルできるはずと信じて。