—012— 帰国子供の学校選びに不安や悩み

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている。

世界でも有数の国際都市「香港」と比べ、日本では東京や大阪でさえも実質的には「国際都市」というには程遠いと個人的には思う。島国だからなのか、はたまた国民性なのか、共同体であろうとする意識が高く、出る杭は打たれるという状況は今も根強い。違いを受け入れる許容量が少ないことは否めない。だからこそ、香港から日本に帰国することを決めた5年前、一番気がかりだったのは子ども達が日本の学校に馴染めるだろうかというものだった。日本語が話せるとはいえ、夏休み以外は香港で生活してきた半外国人だ。考え方や行動パターンは日本人のそれとは異なる部分も多いはず。そこで、帰国の準備として何よりも先に「学校探し」を行った。

長男が小学1年生だった夏休み、私の母校である田舎の小学校に2週間だけ通わせたことがあった。給食当番や掃除の時間がある日本の小学校を経験させたかったからなのだが、彼にとっては苦い思い出となってしまった。彼が記憶している田舎の小学校の思い出は、「ジーンズ履いてる」と同級生にからかわれたこと。帰国後彼が学校に行くことを嫌がらないためにも、学校選びは重要だった。彼が「特別な生徒」にならない環境を用意してあげたいと考えていたので、あえて「帰国子女受け入れ校」に絞って探すことにした。

日本に帰国後、子ども達が通うことになった小学校は、1クラスに数人の帰国子女がいる公立小学校で、帰国してきた保護者で構成する「帰国保護者会」まであった。帰国子女を専門に世話をする先生も3人いて、帰国したばかりの生徒には、授業の入り込みもしてくれる。放課後には宿題を見てくれて、日本語のレベルに合わせて帰国担当の先生による学習のサポートまである。帰国してくる子どもたちの中には、日本語もおぼつかない子もいて、保護者としては本当に有難い環境だ。そして何より、この小学校に通う子ども達は、海外から帰国してくる子どもの受け入れに慣れている。クラスに帰国の転校生が来ると、喜んで迎えてくれるのには驚いた。長男は登校初日に早速お友達を作って帰ってきた。このお友達は、長男より半年早くイギリスから帰国した子で、長男が同じクラスになったことをとても喜んでくれた。同じ境遇の子ども達は、転入時の緊張や不安も共有できるからこそ仲良くなれる。そして次第に、帰国でない友達とも馴染んでいき、いつしか周りに溶け込んでいく。長男は、田舎の小学校で味わった違和感を感じぬまま、卒業することができた。

私は先出の「帰国保護者会」に入会し、昨年度は役員まで経験した。この会は学校行事として、滞在していた国の紹介を授業の中で行ったり、1週間かけて全校生徒に滞在国の生活や習慣の違いを説明し、持ち帰った物品を展示して紹介するというイベントを行ったりもする。今年も帰国保護者会による特別授業を行うにあたり、滞在国と日本を比べて、便利だった点と、不便だった点を考えておいて欲しいと連絡があった。あらためて考えると面白い。香港にいた時は「あの人、鼻毛が出てる」とか、思った瞬間に言葉に出して言えてたなあ。思ったことをそのまま口にできるのは、言葉が違う外国だからこそ。帰国後しばらく、このクセでひやっとすることがあった。外国で暮らすと、ある意味、自由な魂になる。しがらみとか体裁とか、そんなものに縛られない自分でいられた日々が懐かしい。そろそろ、香港に帰りたくなってきたなあ…。