—021— 天災と人

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

西日本を襲った豪雨による死者が150人を超えてしまった。テレビのニュースで被災地の状況を見るたびに心が傷む。昨日までの日常が一瞬のうちに消え去る恐怖。最近はこんな思いを経験する人が増えたように思う。

 命があれば、家族が無事なら、幸運だったと思えるかもしれない。でも、時間が経つにつれ、残酷な現実に苦しめられることになるだろう。家が土砂で流されていたら、ローンが何十年も残っていたら…。途方にくれることだろう。子供たちの中には進学を諦めざるを得ない子も出てくるかもしれない。時間をかけて作物を育てた農家さんは、費やした時間を思い呆然とするだろう。

 宇宙にたくさんの人工衛星を飛ばし、的確な天気予報が可能になった今でも、自然災害の犠牲者をなくすことができていない。テクノロジーの進化するスピードと比べて、人間の進化は遅い。「今まで大丈夫だったから」「みんなが避難する感じではなかったから」と救助された避難しなかった人々が取材で答えていたのが印象的だった。


 大雨や台風と比べて、地震は予知が難しい。日本では30年以内に70%の確率で南海トラフ大地震が来ると言われている。その日は明日かもしれないし、30年後かもしれない。ただ、「きっと今日ではないはずだ。」と思ってみんな毎日を過ごしている。2011年の福島の人達がそうだったように。

 地震と豪雨に連続してみまわれ、「備えあれば憂いなし」という言葉の持つ意味の重さを改めて思い知った。地震直後はスーパーマーケットは閉鎖し、コンビニは品薄、震源地から数十キロも離れた町でもこの有様で、震源地付近では、水道などのインフラが完全に復活するまでかなりの日数がかかった。

 私達が4年前に香港から帰国して間もなく、購入を急いだのが防災グッズだった。非常食や懐中電灯、防寒用具やヘルメットなどなど、水や電気が止まっても数日はサバイバルができるように買い備えた。13年前に東京から香港へ移住を決めた理由が地震だったので、その備えを整えることはソファやテーブルを購入するよりも優先順位が高かった。今回の地震では、この備品を使うことは幸いにもなかったが、賞味期限などを確認する良い機会になった。同時に、災害の程度によっては最低限必要なものだけを手に、即避難ということもあり得るので、備蓄の仕方を再検討できた。

 香港に住んでいた頃は地震の恐怖はなかったので、防災グッズも用意していなかった。ただ、今は地球環境が大きく変化しているから、何が起こるかわからない。香港在住の方にも万が一のために、避難場所の確認や非常食の備蓄などを家族で行うことをお勧めしたい。「明日は我が身」という言葉がある。知らない誰かの身に起こった出来事を、自身の教訓にできるかどうかがサバイバルの鍵となることだろう。

 人間はちっぽけで愚かだ。異常気象に苦しめられながら、温暖化を止められない。自然を敵に回さぬよう、一生物として謙虚に生きたいものだ。