—023— プライド

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている。

自分らしく生きることは、幸せな人生の基本だと思う。でも残念なことに、本当の自分を隠さなければ、社会や組織が受け入れてくれない人達がいる。彼らには何の非もないとしても。

 香港に住み始めてしばらく経った頃、あることに気付いた。それは日本に比べて男性的な女性が多いということ。学生の中にも明らかに男性化している女子学生がいて、女性らしい女子学生とカップルのように振る舞う。買い物に行った先の店員が、男性と思っていたら女性だったということもよくあった。「どうしてだろう」と不思議に思った。食べ物によるホルモンの影響か?遺伝的に何かあるのか?色々考えてはみたが、知る由も無い。ただ、彼女たちは香港の社会に溶け込んでいる。私自身、違和感を感じなかったと言えば嘘になる。だからと言って、嫌悪感や侮蔑といった感情は全くない。ただ珍しい光景に対する好奇心は覚えた。LGBTという言葉すら知らなかった頃の話である。

 この夏休みにバンクーバーを訪れた。LGBTのイベント「Pride Parade」が開催された時期と重なり、街中にレインボーカラーの旗がはためいていた。よそ者の自分ですらワクワクしてしまう雰囲気は、まさに祭りのようだった。老若男女、街中の人々がこのイベントを楽しんでいた。パレードに参加している人々も、派手な衣装を身につけたり、色とりどりに仮装したり、みんなが主役として輝いていた。プライドパレードというネーミングに私は一人感心しきりで、感動すら覚えた。マイノリティーと呼ばれる彼らはここに至るまでに、悩み苦しんだ日々があったはず。今、誇りを持って自分自身を表現している。そして街中の人々がそれを温かく受け入れている。目の前に広がる平和な光景に、胸が熱くなった。なぜなら、日本を出発する少し前に、日本の国会議員が「LGBTは生産性がない」、「LGBTは趣味みたいなもの」と発言したばかりだったからだ。プライドパレードにはカナダの首相ジャスティン.トルドーも参加していたことを夜のニュースで知ったのだが、二つの国に歴然と存在するマイノリティーに対する理解と寛容の差を嘆かずにはいられなかった。

 金子みすゞの有名な詩「わたしと小鳥と鈴と」の一節に「みんな違って、みんないい」という言葉がある。一部の小学校国語の教科書にも掲載されている。私は、優しくて奥深いこの詩が大好きだ。違いを強さにできるよう、寛容な人々を育めるよう、教科書にこの詩を載せようと努めた人々がいることを想像すると、そこに日本人の良心を思う。

 日本では性的マイノリティーの人々を見かける機会は非常に少ない。それは、数が少ないのとは違うのではないかと思い始めている。表現することをためらわざるを得ない環境にあるということだろう。悩み苦しみながら、自らを偽って生きている人々の存在が想像される。

 社会の寛容性でそこに住む人々の幸福に大きな差が生じる。みんなが自分らしく生きられる幸せな社会が地球上の隅々まで広がっていきますように。