—029—ティーネイジャーの扱い方

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

 キンモクセイが香るいい季節。連休が多い10月なのに、今年は連休の度に天気が悪い。珍しく晴れた日曜日にランチに出かけることになった。夫が見ていた映画が終わると、「さあ出発だあ。」と夫は玄関に向かう。子供部屋でLEGOの街を作成中の息子たちは「まだ作ってるー!」とか「まだお腹すいてない」とか出かける気持ちになりきれない。朝から毎日のルーティーンをこなす主婦の私は腹ペコだ。「母ちゃんはお腹すいたよ、どうする?うちで遊んでる?」と子供達に尋ねる。ところが、「いいよ、いいよ、出かければ気分が変わるから。早くおいで、出発。」と畳み掛けるように夫が急かす。子どもの顔が不機嫌になっていく。「お腹すいてないって言ってるけど」という私の言葉を「シーっ!」と夫が制す。「いいから、行こう」と結局無理やり連れ出すことになった。

 車に乗り込んだ後も子ども達の仏頂面は変わらない。私もつい「民主的なやり方じゃないね」と夫に嫌味を言ってしまう。最近の夫はこういうことが多い。幼児ならともかく、ティーネイジャーの息子に親の意見を無理強いするなんて反感を買うだけだ。車が数十メートル進んだところで夫がキレた。バックミラーに映った長男の不機嫌な顔が気に入らなかったらしい。「うちに戻る」とUターンしたかと思うと、車は飛ぶように家に帰った。「行かない人は降りて家で待つ。」と怒りで引きつる夫の顔を見て、呆れながら私は「話し合いがしたい人、手を上げて!」と大きな声で言った。夫以外の3本の右手が上がった。「みんなどうしたい?」という私の問いに「僕はもうご飯に行く気分になってたのに」と次男は車を引き返したことに不満を漏らし、長男は「僕はお腹すいてないから家にいる。お腹すいたらコンビニに行くわ」と言った。「OK、じゃあ後でね」と私が言うと、長男の表情も明るくなり、夫も冷静さを取り戻した。

 夫がみんなでランチに行きたかった気持ちはよく分かる。仕事で不在になることが多いので、家族揃って過ごせる休日は貴重だ。しかし、忙しいゆえに夫は、子どもの発達するスピードの速さに気づいていない。扱い方が幼稚園児の頃のままだ。あの時「みんなと過ごせる時間が少ないから一緒にご飯に行きたいんだよ。飲み物を注文するだけでいいから、一緒に行ってくれると嬉しいな」という言い方にしたら「分かったよ」という言葉を引き出せたのに。彼らの意見を聞こうともせず、自分の意見に従わせようとしたから反感を買ってしまった。『反抗期だから面倒くさい』と切り捨てるのは大人のエゴだと私は思う。

 長男を家に置いて再出発した車の中で、「あの子はいい子だよ」と私は夫に言った。夫は、分かってはいるけれど、自分と性格が違いすぎて理解できないことがあると言った。私は、なおさら彼の意見を汲み取る努力が夫には必要だなと思った。とにもかくにも、怒りのままであの出来事を放置しなかったことで、その後はまた仲良く過ごせている。家庭の中でも民主的な話し合いは大切だ。家父長制のようなやり方は、21世紀の先進国では通用しないと思う。