—040— ベッドタイムストーリー

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

 お風呂上がりのお楽しみは、湯冷めする前にベッドに潜り込んで、本の読み聞かせを…してもらうこと。最近のお気に入りは「えげつないいきもの図鑑」という本だ。様々な種類の寄生虫について知ることができる。眠る前のひととき、次男が読んでくれるこの本を「へー!」とか「うっそー!」とか言いながら聞くのが非常に楽しい。何億年もかけて進化を遂げてきた奇妙な生物たちの生態は、想像を絶するほどえげつない。とんでもなく複雑で巧妙なサバイバル能力には感動すら覚えるほどだ。生物が大好きな次男は、その面白さを私と共有したいがために、一生懸命大きな声で丁寧に本を読んでくれる。読みながら自分が知っているプラスアルファの知識も交えて。私が驚けば驚くほど次男は嬉しそうだ。そんな様子を見てまた、私も嬉しくなる。

 次男の通う小学校では、「音読」という宿題がほぼ毎日出る。先生に指定された文章をお家の人に声を出して読んで聞かせるというものだ。「音読カード」に、『大きな声で間違えないで読む』『句読点で区切って読む』『気持ちを込めて丁寧に読む』などの項目があり、お家の人に◯や△を付けてもらって、翌日担任の先生に提出するのだ。すでに4年ほど小学校に通っている次男だが、この宿題をきちんとすることは稀だ。気に入った物語だったり、私の意見を聞きたい内容の文章だったりした場合は「音読」してくれるのだが、そうでなければ自分で適当に記入して提出してしまう。決して褒められたものではないが、まあ目くじら立てるようなことでもないかと私も黙認してしまっている。音読の課題が自由なら宿題は毎日きちんとこなせたことになるのに…。彼は本を読むのが嫌いなわけでも、下手なわけでもないけれど、面白くないと思ったことはしない。それでもしなければならない時は、とんでもなく不機嫌になる。将来日本のサラリーマンになったなら、確実に不幸な人生を歩むだろう。彼が得意分野を職業にできるよう、母としてサポートができるか否かで彼の人生の成功が決まるのではないかというプレッシャーすら感じる。宿題をきちんとさせるという親の責任をはたしていないので面目ないのだが、私も真剣に子育てには取り組んでいるのだ。彼の理解者であるがゆえに、彼の良さを壊してしまわぬよう、彼にとってベストの学びは何なのかに思いを巡らしている。

 私は文学部出身で、学生時代から所謂文系タイプだったために語学や文学を好んで学んできた。我が子が昆虫やら恐竜やら動物やらにこれほど興味を抱くようになるとは想像もしていなかったものの、彼が私と違うものに対して強い興味を持ったがゆえに、私自身も新しい分野の知識を得ることができ、そこに面白さを感じられたことがとても意義深い。人間が作り出したものばかり学んできた自分には、自然が作り出したもののスペクタクルな存在感に圧倒されるばかりだ。私の頭の中で、古い知識と新しい知識がピピピとつながる音がする。寄生虫の生き方に、人間の存在意義を考えたりなんぞしてみる。そして、我が子はどんな人生を送るやらと考えたりなんぞしてみる。