—042— 教育委員会

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている。

先日、心をえぐられるような非常に悲しい、痛ましい事件が起きた。小学4年生の女の子が父親からの虐待を受け続け、自宅の浴槽で遺体で発見されたのだ。我が子と同じ年頃の子どもが、肉親からの暴力の果てに命を落とすその時、どんな思いだったのか。胸が張り裂けそうだ。しかし、私が一番憤りを感じたのは、この少女が父親からの虐待を告白した「イジメ調査アンケート」が、教育委員会から父親の手に渡っていたことだ。結果、少女への虐待が激化した可能性もある。なぜ、「ひみつをまもります」と明記してあったアンケートを、よりによって暴力を振るっていた本人に渡したのか。私は「バカなの?!」とニュースの第一報を目にした時に思わず叫んでしまった。これ以上の失態があるだろうか。
数日後の記者会見でこの教育委員会のメンバーが、アンケートを見せろという父親からの恫喝に屈し、恐怖のためにアンケートを渡してしまったと質問に答えていた。自身の身を守るために、子どもを差し出したと言われても仕方ない。

数年前、イジメを苦に自殺した女子学生に関して学校がイジメの有無を聞き取り調査したメモを、教育委員会が隠ぺいするという出来事もあった。聞き取り調査があったことを知った遺族から調査結果を出すよう学校に要望があった際、学校長が教育委員に相談したところ、事務処理が増えることを理由に、「調査結果のメモは残していない」と学校から遺族に嘘をつくよう指示していたのだ。子どもの命の重さを事務処理の煩わしさと天秤にかけ、自殺した女子学生の無念や、遺族の悲しみを想像することさえできない人間がなぜ、教育の世界にいられるのだろう。

政治やビジネスの世界で汚いことがいっぱいあることは、私も大人だから分かっている。でも教育界は違っていて欲しかった。教育委員会は、国の宝である子ども達を導く『道しるべ』となるような、志の高い人達で形成されている組織であって欲しかった。嘘をつき、自分の身を守るために子どもを生贄として差し出すようなことをする人がいて欲しくなかった。同じ大人として心底情けないし恥ずかしい。相次ぐ教育委員会の不祥事を目にするこの国の子ども達は、大人への不信感を募らせるに違いない。

子ども達を守れない大人達。虐待死した少女の近隣住民は子どもの悲鳴や泣き声を聞いていたという。けれども、児童相談所や警察には届ける者はいなかった。彼女は、責任感ある大人に巡り会えなかったために命を落としてしまった。二度と、こんな悲しい事件が起きないことを心から願い、少女の冥福を祈る。