—028— 夫在宅症候群

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

 仲良くしている友人の体調が振るわない。めまいや吐き気があるという。ほてりで髪から汗が伝うこともあれば、急に寒くて震えるらしい。どうやら、更年期障害だ。しかも、特に夫が在宅中は症状が悪化するという。夫在宅症候群も発症しているようだ。私は医者に診てもらうことを勧めた。彼女の症状が改善されることを心から願う。


 日本に帰国後知り合ったママ友の中に、夫在宅症候群に悩む人が多いことに驚く。つまり、夫が単身赴任中や出張中は元気でいられるのだが、夫が家にいる時にはストレスで体調を崩すのだ。冗談のような話だが、実は深刻な問題だ。体の変化に苦しむ時期に、夫の無理解にも苦しみ、心の中の鬱憤に体が壊されてしまう。香港でもこんなケースは多いのだろうか。それとも、日本人男性特有の何かがあるのか。年上の夫が高圧的な態度で妻に命令する。仕事以外の友人が少なくて休暇になると妻の行動に干渉する。こんな男性が多い。子ども達が独立した後、こんな夫と二人きりの生活が待っているとしたら、私なら耐えられない。

 子どもを育てている間、母親というものはどうしても子どものことで頭がいっぱいになってしまいがちだ。忙しく毎日をバタバタと過ごしているうちに時が過ぎる。いつの間にか子ども達は手がかからなくなり、自分のために使える時間も増えるのだが、夫との時間は子どもが生まれる前のようには戻らない。ある友人は私にこう言った「離婚するのも面倒だ」と。夫との話し合いに時間とエネルギーを使うことすら煩わしいそうだ。ここまで関係が悪化する前に、打つ手がなかったものだろうかと話を聞きながら私は思った。

 女性は話を聞きいてもらい、賛同してもらうことで満足感を得ることが多いと聞いたことがある。私も、夫が家事を手伝わなくても、スマホばかりいじっていても、きちんと私の話を聞く時間を作ってくれたら、それまでのモヤモヤがスッキリ晴れる。本当に些細なことが、家族をつないでいるのかもしれないと思う。絶妙なバランスで家族という形を保っているのだ。夫婦や子ども、祖父母など、誰かが調和を乱せばバランスは崩れてしまう。戸籍上の、つまり手続きや書類上の「家族」は存在し続けたとしても、目に見えないが確実に存在する心のつながりである家族の形は、ガラス細工のように繊細なもので、簡単に壊れてしまうのかもしれない。

 更年期障害や、親の介護、子どもの受験や、夫の退職。女の試練は続く。今のうちからできる対策を「転ばぬ先の杖」として練っておきたいものだ。さて、何から始めてみようかな。夫に相談してみるか!