—016— 夏空のエネルギー

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

仕事で香港に帰っている夫が時々写真を送ってくる。その空が青くて、胸がツーンとする。
 私たちが暮らしていた香港島のアパートからは、夏には青い空と青い海、遠くの島々がはっきりと見えた。その美しさを留めたくて、朝も昼も黄昏時も写真を撮った。空と海が青いだけで、人はこんなにも幸せを感じられるものなのかと思った。青い空なんてどこも同じだと言われるかもしれない。でも、香港の夏の空の写真を見ると、心がノスタルジックにうずくのだ。

 青い空をバックに子ども達が元気に遊びまわっていた。香港というと大都会というイメージが強いが、実はアウトドアも盛んで、香港滞在中には何度かワイルドキャンプにも行った。


 ボートで離島にわたり、そこからしばらくハイキングをしてキャンプ場を目指す。最初に行ったキャンプ場には牛がたくさんいた。牛の糞を踏まないように気をつけながら過ごさなければいけない。それでも普段見かけることのない大型動物に子ども達は興奮していた。夜中になると牛同士のケンカが起こり、一緒にキャンプをしていた義弟のテントに牛が倒れこんできて、ちょっとしたスリルを味わった。暑さに弱い私は熱中症になってしまい、日陰で休んでいたのだが、牛に混じって巨大なイノシシが炊事場の脇にいるのを見つけて血の気が引いた。弱り切って声も出ない私に見向きもせず、イノシシは土の匂いを嗅ぎまくっていた。このワイルドな経験は都会のアパートに帰ってから楽しさを実感したものだ。


 また、アパートの裏手からピークに続くハイキングコースを子ども達と一緒に何度も歩いた。鳥の声を聞きながら、変わった虫を見つけながら、ゆっくりゆっくり登っていく。海に進む大きな貨物船が遠くに見えて、「どこから来た船だろうね」などと話をした。私も息を切らせて登っているので、子ども達が疲れても、抱っこもおんぶもしてあげられない。だから子ども達も最後まで自力で登るしかない。ピークまで登りきった達成感を感じながら、カフェで飲むジュースは本当においしかった。


 大阪に移り住んで4年、一番恋しいのはビーチだ。赤柱や石澳のビーチで、まだ幼かった子ども達が楽しそうに砂遊びをしたり、水遊びをしたりする姿を思い出す。小さな魚を見つけたり、カニを追いかけたりもした。青い空と青い海と白い砂の中で、満面の笑みでポーズする子ども達の写真がアルバムの中にはいっぱいだ。

 空が青い香港の季節は長くない。風が北から吹き始めると、白く霞んでしまうから。遠くの島まで見えていた風景は、目の前のビルまで霞むようになる。心も雲がかかったように、もやもやな季節が始まる。いつか、一年中青い空の香港に戻るといいな。とにもかくにも、夏は香港最高の季節。ポジティブなエネルギーで子ども達を満たすことができる。グングンと成長している音が体から聞こえそうな勢いだ。山へ行こう、海へ行こう、楽しい思い出をたくさん作らなきゃ。子ども達はあっという間に大きくなってしまうから。