—018—SNSと子ども

白井純子 

愛知県出身。大学では国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得し、現在保育士としてパートタイムで働いている

先週、長男の学校から保護者宛にメールが届いた。ある女子生徒がいわゆる不適切なメッセージを受け取り、自身の子どもが加害者になっていないか確認してほしい、またそのアイコンから加害者に心当たりはないか、という内容だった。その後、長男がその事件に巻き込まれていたことを知る。加害者生徒は、事件発覚前から自身がやったことを友人達にほのめかしていたこともあって、すぐに学校側にも連絡が入っていたようだった。しかし、加害者生徒がうちの長男がやったと嘘をついたことで問題が大きくなったのだ。加害者生徒の保護者は自分の子を信じると言い張り、警察やら弁護士やらを巻き込んで証明すると言いだした。学校側がどう説得したのか詳細は分からない。ただ、加害者生徒がやったという証拠しか出てこないことは明白で、それは彼を窮地に追い込んでいく以外ない。最終的には、学校と加害者生徒の両親との話し合いの中で収まったようだ。

 子どもにSNSのようなツールを与えることの危険性は、何年も前から知っていた。多くの保護者もそうだと思う。ただ、学校によっては連絡事項がペーパーではなくSNSを利用するところも増え、避けて通れない時代でもある。インターネットを活用した学習方法も学校が取り入れていたりするので、スマートフォンやタブレットなどがない場合には学習内容の予習復習ができないこともある。そういう時代なのである。だからこそ、子どもを守るために保護者として何ができるのだろうかということを、今回の事件であらためて考えさせられた。


 子どもにとって私は、何でも話せる相談しやすい母親だろうか。SNSの危険性をきちんと話せていただろうか。何よりも、善悪の判断ができる子に育っているだろうか…長男としっかりと話し合う良い機会になったことは間違いない。彼はSNSを始めて3ヶ月にして、これ以上ない形でSNSの恐ろしさを経験した。

 子ども達は文章表現力、読解力、問題解決力もまだ未熟だ。SNSのチャットは、会話の形で進むやりとりでありながら、相手の表情を確認することができない。主語が抜けたり、曖昧な表現があったりと、勘違いが起こることも大いにありうる上、それに気付き難いという問題点もある。SNSというツールを賢く利用するには、このデメリットを認識した上で、新しいコミュニケーション方法に必要な人的スキルを補っていく必要があるだろう。では、使う人間のスキルをどう養うのか…簡単ではない。SNSを使い始める年頃の子ども達は、親と話をすることさえ面倒くさがる。何かを聞いても適当な返事しかしないといった経験は多くの母親にあるだろう。そんな中でも、なるべく時間をみつけてきちんと話をするようにしたい。信頼関係を築くためにも、言葉で自分の想いをきちんと表現する能力を養うためにも。言葉を使うことに丁寧であるように心がけるだけでも、ゆくゆくは大きな差が出るのではないかと私は考える。そして何よりも、子ども達に「嘘をつかない」「人を傷つけない」などの道徳観念を育てることを親が怠らないことが大切だと思う。世界に飛び交うニュースを見ても、すべての大人が子どもの見本になれているとは言い切れないが、テクノロジーが進歩する中で人間が退化しては意味がない。


 友達とのチャットに夢中になって利用時間の約束を守れなくなっていた長男に「SNSに使われるんじゃなくて、SNSを使うようにならないとダメだよ」と言うと、「なるほど」と腑に落ちたような表情を見せた。どんな時代になっても、基本は人間力。思考して語り合う、ソクラテスの時代から大切なことは変わらないのかもしれない。