インタビュー くらす香港

くらす香港 拾「香港でバッグの新しい未来を築きたい」中山 美代子さん


インタビュー くらす香港

 


くらす香港 拾「香港でバッグの新しい未来を築きたい」中山 美代子さん

暮らしてみて見える・感じる香港を各フィールドで活躍する女性に伺いました。

<プロフィール>

大阪出身。日本国内でマーケティング職を経験後、2008年に来港。香港における『PELLE BORSA・ペレボルサ』のかばん・小物類の企画製造販売業 NAKAYAMASOTO (HONG KONG) Co., LTD. のディレクターに就任。2013年に新ブランド『NNM』を姉妹で設立。現在、コーズウェイベイ、チムサーチョイ、セントラルの3カ所に店舗を展開。https://ja.nnmjapan.com/

日本全国の大手百貨店内に店舗を展開するバッグブランド『ペレボルサ』。創設者となる中山美代子さんの祖父・外次郎氏が、少年期からバッグ製造の技術を磨き、工場で職人と寝起きを共にしながら和装小物などの製作をしたのがはじまりだ。その後、イタリアの職人が作るバッグに魅せられた外次郎氏の三男・順三氏(美代子さんの父)が、『ペレボルサ』のブランドを立ち上げ販売を開始。製作の細部にまでこだわった質の高いバッグは着実に客の心をつかみ、生産が追いつかないほどに。95年には生産拠点拡大のため中国に工場進出し、その後、香港に店舗を出店した。現在は順三氏の長女・なつみさんと次女・美代子さん姉妹が独自のブランド『NNM』を設立し、香港で製造販売を展開する。現在、ディレクターを務める美代子さんに話を聞いた。

■父と姉、母と私。家族2拠点の暮らし
私は姉と共に、大阪生まれ・育ちです。幼少の時から私はスカートを履きたがらず、外で遊ぶのが好きなやんちゃな子供でした。姉は逆に室内で遊ぶのが好きな子供でした。父は会社経営で常に忙しかったのですが、会社が近所にあったので、仕事の合間に家に戻ってきたり、またスタッフの方が家に遊びに来る機会も多かったため、私は子供の時から親の働く姿を見て育ちました。母は、父や私たち娘のためにずっと家庭を支えてくれました。私も姉も、両親からたくさんの愛情を受けて育ってきたと思います。

外に出るのが好きだった私は、大学・社会人時代に上海やオーストラリアで短期留学やワーキングホリデーを経験しました。しかし、私よりも姉の方が先に海外で働くことになりました。『ペレボルサ』の工場を中国で稼働させるにあたり、1995年に父と姉が香港に事務所を構えることになったからです。
それ以来、父と姉は香港で暮らし、母と私は日本で暮らすという、家族が2拠点に分かれた生活が始まりました。でも気軽に海外を行き来できる環境でしたので、家族全員が揃って会う機会は年に数回ありました。

■父と姉と私と。父と娘の絆、再び

私は日本で大学を卒業後、一般企業に勤めました。2008年に来港したことがきっかけで家業を手伝うことになり、香港での生活がはじまりました。当時、姉は子育てで忙しかったため、私は仕事場でも家でも、いつも父と一緒でした。でも、それまで父とは十数年も離れて暮らしていたので、父との2人暮らしは当初、少し違和感があったことを覚えています。
バッグ製造販売業に携わるのは初めてでした。スタッフの会話が理解できず、仕事に関しても分からないことが多くありました。そのような状況でも判断を下さなければならない立場だったため、自分の未熟さを感じ、葛藤する日々でした。最も身近にいる父は会社の経営者でしたが(現在は引退して帰国)、家族であるが故に、かえって質問をするのが難しかったのを覚えています。
でも仕事を終えてから、自宅のあるディスカバリーベイに戻るセントラルのフェリー乗り場で父とビールを飲む時間は、ホッとするひと時でした。ビールでお腹を膨らませた後、家に帰って父と食事をしたものです。会社で父から直接指導を受けることはあまりなかったのですが、こうした帰り道の時間や、スタッフを連れて飲みに行った時などのプライベートの時間帯に、父が語る仕事の話を聞くことができました。
当時、父は日本語でスタッフに指示を出し私に通訳をさせていました。ですが、スタッフに指示をしていたようでも、実はその指示は私へのアドバイスだったのだと時を経て初めて分かり、改めて父の懐の深さを感じています。

父が築いてきた香港での事業を娘である姉と私が引き継ぐことに対して、父の思いを直接聞いたことはありません。ですが、これまで私の意見や考えを常に尊重してくれ、また失敗に対しても口出しをしてこなかった父は、私の成長を寛大な目で見守っていてくれていたのだと思います。今、日本にいる父には電話口で怒られることが多いのですが(笑)、遠く離れた場所からも心の支えになってくれていることに感謝です。

2013年のセントラル店のオープンを祝って。
(写真左から)中山美代子さん、なつみさん(姉)、順三氏(父)

2014年、TSTのThe Luxe Manor Hotelで開催されたVIPイベントで。
(写真左から)中山美代子さん、なつみさん(姉)、順三氏(父)

店舗面積が一番大きいセントラルMANYEE店の前で

■姉と二人三脚で。『NNM』に込めた思い
95年、中国に『ペレボルサ』の工場を構えた時、父は日本で製造するのと同じクオリティのものを作るという揺るぎない信念を持っておりましたので、日本から職人を常駐させ、バッグの製造工程を厳重に管理しました。香港に店舗を構えてからのこの二十数年、売り上げが伸び悩む時期もありましたが、父はどんな情勢においても、吟味した素材と製作技術へのこだわりには一切妥協をせずに参りました。おかげさまで、高い品質のバッグをご提供することで香港のお客様に信頼をいただき、長くご愛顧いただいております。

姉と私はその父の思いを引き継ぎ、2013年に新しいブランド『NNM』を立ち上げました。『NNM』の名称は、そのコンセプトである「Natural(天然に) Nestle(寄り添う) Mind(想い)」の頭文字を取ったものです。私が事業経営を担当し、デザイン学校で学んできた姉がバッグのデザインと製造管理を担当しています。『ペレボルサ』は手のこんだ職人的な正統派のイメージがありますが、『NNM』は今の時代に合ったシンプルさを持つ一方で、カラフルで元気が出るバッグを特徴としています。防水効果があるもの、軽くて持ちやすいもの、折りたためるものなど、素材・利便性を重視し、色のバリエーションも豊富に取り揃えております。
現在、FacebookやInstagramを通して、商品やプロモーション情報のライブ発信、また動画配信をしていますが、今後はさらに内容を充実させていく予定です。また『NNM』のコンセプトに合わせて、カフェやヨガスタジオ等とのコラボレーションなど、新しいことにもどんどんチャレンジしていこうと思います。
『ペレボルサ』のバッグ作りに情熱と高い志を持ち、それに向かって突き進んできた父の信念を受け継ぎながら、私はそれをさらに超えるブランドを、ここ香港の地でつくっていきたいと考えています。

 

1955年頃、大阪の工場(当時)の様子。写真右奥、正面を向いているのが
美代子さんの祖父・中山外次郎氏、またその右隣が美代子さんの祖母

姉・なつみさんと美代子さんが生み出したバッグ、NNMの商品

<10の質問> 

(1)日常生活スタイルを教えてください。

朝、ディスカバリーベイの自宅からMTRとバスを乗り継いで、9時前には葵桶にあるオフィスに出勤します。会社で企画会議などを行ったり、プロモーションや営業などで外回りをすることもあります。夜8時ごろに帰宅します。

(2)休みの日に何をしますか。

休みは土・日の週末です。テニスをするなど、体を動かして過ごすのが好きです。

(3)普段、よく行く場所はどこですか。

よく旺角のフラワーマーケットへ行きます。買ってきた花を部屋に飾るだけで癒されます。

(4)「とっておき」の場所はどこですか。

大仏があるゴンピンや黄大仙などです。私にとってのパワースポットです。

(5)朝食はどこで食べますか。何を食べますか。

自宅で食べます。朝食は、食パンにチーズと目玉焼きをのせたもの。それからプロテインを必ず飲むようにしています。

(4)香港のどんなところが好きですか。

円卓を囲む文化がいいですね。日本では集団思考が強くてグループに入りにくい雰囲気がありますが、香港では円卓でワイワイ食べるように、人がひとり増えても減っても気にならない、そんな気楽さがいいです。また香港人の勉強熱心でエネルギッシュなところが好きです。

(5)香港で一番驚いたこと、カルチャーショックだったことは?

舌打ちしたり、道に痰を吐く人がいたことです。

(6)香港で食べたもので一番美味しかった料理は?

上海蟹

(7)苦手な料理は?

猪血(豚の血を固めたもの)

(8)仕事以外でチャレンジしたいこと

香港に来てから習いはじめたテニスの公式試合に、いつか出てみたいです。またコーラスにも挑戦してみたいです!

(9)香港で得た一番の財産は何ですか。

経験です。特に仕事における経験は、香港で得た一番の財産です。

(10)香港に住みたい、香港で働いてみたい女性へのメッセージ

香港は国際色が豊かな場所です。様々な考えを持つ人との交流が、自分の視野を広げ、さらに向上心を高めてくれます。チャレンジしたい人には、ぜひお勧めしたい場所です。

<あとがき>
家業とはいえ、十数年前まで全く別の分野にいた中山美代子さんは、香港に来て初めてバッグ業の世界に入りました。仕事もさることながら、初めて見聞きするものが多い海外で戸惑いも不安も多かったことと思いますが、この取材を通して、父親である順三氏ゆずりのバッグに対する情熱と信念を受け継ぎながら、「香港で新たなバッグ製造販売の道を切り開く」という強い意志を美代子さんから感じました。

聞き手:龍池千明 Oct. 16, 2020

Nov 11, 2020

Related Posts

發佈留言