先日、小学6年生の授業で立体図形の難問をいとも簡単に解いてみせた男の子がいました。こんな図形問題が得意な子をどう育てるか。これはなかなか難しいテーマです。計算が得意な子を育てることも大変ですが、図形感覚を培うことはさらに困難なことのように思えます。それは、その才能がまるで天賦のもののように思えてくるからです。
ある数理教育プログラムの開発者によると、9歳までの教育やトレーニングによって、その後の空間や平面図形の把握能力のポテンシャルが大きく左右されると言われています。確かに、幼年期にプラモデルやレゴなどで遊んだ時間が長い子の方が、図形問題への「勘の良さ」「センス」のようなものを感じる時があります。
例えば、入試問題などの図形の問題では「補助線」を引くことが解法への第一歩となる場合が多いのですが、その補助線が初めから見えている子と、どうしても見えない子に分かれてしまいます。「見えている子」にとって補助線は、色つきで浮き上がって見えるらしいのです。そうです、まるでギフトのような才能です。見えない子にとっては、厄介な問題です。
つまり、算数・数学の一分野である図形問題にとってもっとも重要な基礎力は、「眼の力」であり、極めてフィジカルな課題なのです。この課題に対して、子どもたちは、あるいは保護者や教師はどんな準備ができるのでしょうか。
当たり前のことですが、実は、フィジカルな問題には、フィジカルに対応していくしかないのです。もし、お子さんが、まだ小学3年生以下であれば、平面パズルや立体パズル、組み立てブロックなどで遊ばせる時間を多くとるなどやれることは多く残されています。図形の把握能力だけでなく、思考力や創造性、集中力の保ち方など、多くの収穫がのちの成長を加速させてくれるはずです。
もし、お子さんが、もっと上の学年になってたらどうでしょう。それでも諦める必要など全くありません。例えば、小学6年や中学3年の受験生なら、是非、手を動かして、算数や数学を学ぶクセをつけていきましょう。問題で与えられた図を、ノートに自分の手指を使ってフリーハンドで写し、自分の眼で見て特徴をつかみ、補助線を描き込んで思考するのです。そう、アタマの出番は最後。あくまで、手指や眼が主役の思考なのです。
大切なのは、フリーハンド。コンパスや定規の介在は手指の感覚をスポイルし、指での思考を阻害します。手で学ぶ、それが図形に強い子を育てる秘訣なのです。