絵本から得られるもの

わすれられないおくりもの


絵本から得られるもの

絵本を読むこと、読み聞かせること、こんなことをじっくり考えるなんて、ひまな人だろうと思われるかもしれませんが、世の中のお父さん、お母さん、または子どもに関わる人たちにどうしても伝えたくて、分かりきったことかもしれませんが、時間を割いて読んでいただけたら、とても嬉しく思います。

プロフィール :
横井ルリ子さん 教育者教員経験を活かし、個人教授という立場で長年教育に携わる。現代の教育に疑問をもち「母のクラス」「こころのクラス」など独自の教育法を実践。最近は、読み聞かせ、読書、作文など国語教育にも力を入れている。在港16年。

 


わすれられないおくりもの

前述の『名なしの子ねこ』と同じ箱の中にもう一冊こんな絵本が入っていた。『わすれられないおくりもの』。長女(8歳)は、一早くこの本を読んでしまったらしい。次女がある晩「今日はママ、この本、読んで!」と持って来た。
もうすぐ9歳になる長女は、三度の飯より本が好きで、静かだなと探しに行くと、歯も磨かず、本に没頭していたりする。最近のお気に入りは、『窓際のトッ トちゃん』と『十五少年漂流記』。「ねえ、お母さん、本当にトットちゃんっていたの?」「これって本当の話なの?」としきりに聞いてくる。「そうだよ。 トットちゃんってね、黒柳徹子さん。この本書いた人でこのおばちゃんだよ。」と写真を見せると、彼女は自分の思い描いていたトットちゃんと現実のそれとのギャップに戸惑いの表情を見せた。
『十五少年漂流記』は私も読んだことがないので、詳しい内容は知らないのだが、彼女は「ああ、このお話って、何回読んでもドキドキしちゃう。」と安上がりなことを言っている。
「早く!早く!」と次女にせかされて、『わすれられないおくりもの』のページをめくった。たくさんの動物たちが登場するこのお話。年をとったアナグマが 静かにこの世を去る。かけがえのない友を失った友人たちは、それぞれがアナグマとの思い出を回想し、一人一人が悲しみをのりこえていくお話だ。
アナグマはお話の序盤で死んでしまうのだが、その辺りで長女がポロポロ涙を流し始めた。お節介な次女は「ママ、お姉ちゃん、泣いてるよ」肘でちょんちょんと私をつついた。長女は既にこの本を読んでいたはず。内容を知っている彼女に少し尋ねてみた。「この本、もう自分で読んで、お話を知っているんだよ ね。」長女曰く、「うん。自分で読んだときは、早く先が知りたくて、急いで読んだから、全然涙が出なかったんだけど、ママに読んでもらったら、ママはゆっ くり読むから、泣けてきちゃったんだもん。」
長女は8歳。一人で何でも読めてしまう。だから最近、以前ほど本を読んであげていなかった。大きくなっても、やはり、読んでもらうということを卒業した わけではなかったのだ。自分で読んだときと、読んでもらったときの味わい方が違うのだろうか。自分で読むときは、文字を必死に追いながら、内容を理解しているので、感情移入しにくく、お話の中に入り込み、酔っている余裕がないのかもしれない。
読んでもらった方が感動が深いということなのだろうか。よくわからないが、、、、。
いずれにしても、まだまだ心の栄養が必要な年頃。さあ、今夜も絵本を読みましょうか。

2008年8月31日の日記より
*『わすれられないおくりもの』スーザン・バークレイ さく・え
小川 仁央 やく
評論社

    

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