インタビュー 香港ハンサムウーマンFile
File No. 12 東條 のりこ さん
大学院卒業後、リクルート関係の出版社で就職情報誌の編集ライターとして、主に企業インタビューを担当していました。91年、プライベートで訪れた香港で、カルチャーショックを受けました。特に尖沙咀のネイザンロードからビクトリアハーバーを臨むアングルに高層ビル、飛行機、スターフェリーなどのコントラスト、様々な物がギューッと詰まった風景に強く惹かれ、時々香港に旅行で来るようになりました。
そうしているうちに広東語でインタビューしてみたいと思うようになり、日本で広東語を習い始めます。93年、香港で働く日本人女性について書く機会があり、思いがけずその記事に大きな反響がありました。その直後に他の雑誌でも香港での就活がさかんに取り上げられるようになり、日本人女性の香港就職ブームが起こりました。一方、プライベートでは日本での広東語学習に限界を感じ、香港中文大学(広東語コース)に留学することを決意、香港に移り住んだのが94年でした。
香港中文大学在学中に日本人向けの月刊誌「香港通信」の編集部でお手伝いを経て、95年編集部に就職。97年までここにお勤めしました。香港で結婚し、98年主人の親戚一同が住むカナダのトロントへ引越しましたが、周りが香港人だらけ、聞こえるのは広東語ばかりなのには驚きました。日系スーパーがなかったので、中華系スーパーで買い物するのですが、調味料の名前が分らず、「なぜ香港滞在中に中華料理を習わなかったのか、次に香港に住むことになったら絶対に中華料理を勉強するぞ!」と心に誓いました。
すると99年に主人の仕事の関係で再び香港へ。あの誓いを果たす時がやってきたのでした。
もちろん香港へ戻って真っ先に向かった所は料理教室。たまたま入学したのが職業訓練系の調理学校で本格的な中華料理を次々と習いました。ローストの授業では窯でチャーシューを焼き、点心を生地から作るなど、すでにプロだったりプロを目指す人たちに混じって大変だったものの周りの人たちに助けられ課題をこなすことができました。
実は「香港通信」編集者時代にカナダ移住する98年まで読売新聞香港衛星版のコラムを連載していました。(正規社員が別媒体でアルバイトするなど常識では考えられませんが、当時は「香港通信」のPRにもなるなら、とアルバイトが容認されていたのです。)カナダから戻って暫くすると、読売新聞の方からコラム再開のお誘いを受け、自分自身が最も関心のある香港の食文化をテーマに据えました。
こうして「香港味探検」は2000年に連載がスタートし、現在339回。15年間、一度たりとも同じメニューはありません。料理上手な香港人のお手伝いさんや下の階に住む大家さん、上海料理のコックをしている主人の親戚に料理を教わったりしながら何とか続けてこられました。回数を重ねる毎に次回の紹介メニューを何にしようか頭を悩ませます。ただ社会はめまぐるしく流動し、中国からの新移民が増え本格四川や地方の料理を受け入れられるようになったり、日本食が定着し刺身をはじめ以前は食べなかったものも今や定番メニューになっているのはほんの一例として、食を取り巻く環境は日々変化しています。それをつぶさに観察し、この連載にも取り入れていくようにしています。実は、何度トライしても納得いかない料理があり、まだまだ挑戦は続きます。レシピを掲載するまでには同じ料理を何度も試作するので、それに付き合ってくれる家族に感謝しています。
このインタビューを読んだ方へのメッセージ 中華系スーパーを上手く使いこなせれば、世界中、チャイナタウンのある場所ならどこでも暮らしていけるのでは!?というトロント時代の経験が、「香港味探検」のベースにあります。食材の知識があれば、和にも洋にも応用ができますから。香港は、食材が豊富で、食べたり作ったり、いろいろと挑戦できるのがいいですね。香港での生活をぜひ楽しんでください。 |
10の質問
- 子どもの頃の夢はなんでしたか?
小学生の時は漫画家、その後は書くことが好きだったので脚本家 - 思い描いていた理想、夢はどれか叶いましたか?
料理本を眺めるのが大好きだったし、料理コラムの連載は料理も書くことも関係しているので、叶ったと言えるでしょう。 - 将来の夢はなんですか?
いずれ日本に帰ったら、中華料理のレシピを日本の食材で作りたい。 - ママとして心がけていることはなんですか?
子どもは親とは別の人格だと捉え尊重しつつ、バランスを考えながら口出しすること。 - 女子として心がけていることはなんですか?
どのように老いるかを考えています。ダイエットより、適度な筋肉と脂肪を維持できるよう努力中。 - 子育てで一番つらかったことはなんですか?
学校選びなど選択肢が多く、何を基準に決めるか迷いました。 - それをどうやって克服しましたか?
正解はないので、なんとも言えません。でも、毎日楽しそうに通学しているので、とりあえず間違ってはいなかったのかな、と。 - リラックス法はなんですか?
マッサージ、ラジオ体操。 - 好きな音楽、カラオケでよく歌う曲はなんですか?
聞かない、歌わない。 - マイブームな食べ物、美容法、本なんでも、おすすめを一つ教えてください。
ここ3、4年はほうじ茶、特に茎ほうじ茶に凝ってます。日本から取り寄せているのですが、気分や体調に合わせて香ばしいタイプやエスプレッソのようなすっきりした渋みが特徴のものなど、何種類か常備しています。
<あとがき>
「香港味探検」を読むと屋上で干し肉を作ったり、ソースを何種類も比較しブレンドしたり、香港人でも作ったことないような料理に挑戦され、香港人より香港らしい人を勝手に想像していました。ところがお会いしてみると優しさがにじみ出る大和撫子ではないですか!私なら外食や市販品でいいのでは?とつい言いそうになってしまうようなB級グルメも、何度も何度も試作を重ねて紙面に紹介していると伺い、その粘り強さ、たおやかさ見習いたいです。