インタビュー 香港ハンサムウーマンFile
File No.4 増永 紅実(ますなが くみ)さん
3歳からお稽古事としてピアノを習っていましたが、小学校5~6年生の時の音楽の先生に出会って、世界が広がりました。自腹で買ったドラムキットを何台も学校の音楽室に置いてロックのリズムを生徒たちに指導したり、マイルス・デイヴィスのジャズを編曲して合奏に使うような、型破りの熱血先生のもとで、音楽の楽しさを知っていきました。中学ではギターを弾き、バンド活動を始めました。社会人になってからもバンド活動と会社勤めの2足のわらじを履いていました。
21~22歳の頃、大好きな祖母を一人で自宅介護していましたが、周りの人の勧めで施設に入れるようになった時、息抜きのつもりで友人が住む香港に遊びに来ました。香港では友人のヨットで寝起きし、アーティストたちと交流し、この地がすっかり気に入ってしまいました。
1990年から香港に拠点を移し、翻訳と通訳の仕事をしながら音楽を続けました。アフリカ音楽のコンサートに感動してアフリカンドラムを叩くうちに、西アフリカ諸国を度々訪れるようになり、生活のあらゆる面で生きている美しいドラムビートに惹かれていきました。私の自由な感性にぴったりで、かつ刺激的で新鮮なたくさんのリズムが、地球を半周したところで私を待っていたのです。
その後ドラムサークルの世界へ足を踏み入れた時、いい波に乗ったと感じました。米国ドラムメーカーのREMOとその香港代理店である楽器店Tom Leeのサポートでコミュニティー・ドラムサークルをするようになり、14年目の現在も毎月、尖沙咀の文化中心前の広場で開催しています。年齢、国籍もいろいろな方たちが参加してくれて、楽しいですよ。リズムに乗ってビートを刻めるのは人間と(ある種の)オウムだけってご存知ですか?私たちにとって、リズムは生まれつきの才能なんです!
今日、音楽は教育、研修、医療、福祉など様々な分野でその効果を発揮しています。香港という土地柄、組織変革に伴うチーム作りやリーダーシップなど、企業研修の仕事が多いですが、学校訪問や知的障害者センター、癌協会などでもプログラムをやっています。大勢でリズムを奏でることで、一体感と笑顔が生まれ、ポジティブな気持ちにスイッチが入ります。
音楽に導かれてここまで来ましたが、この地で活動できることに感謝しています。また香港は私の命の恩人でもあります。アフリカから戻りマラリアで倒れたときも、離島からヘリコプターで公立病院に運ばれ、治ったと思ったらぶり返し再度ヘリコプターに。隔離病棟へ入院し治療を受けました。外国人でも香港市民として医療などの社会サービスを受けられ、自由な感性を生かさせてくれるこの土壌を愛してやみません。私なりの香港への恩返しという気持ちを込め、悲哀の街とも呼ばれる天水圍でチャリティ活動を始めました(今は受け入れ先の事情で一時休止中)。10の質問の将来の夢にも書きましたが、何とか再開、継続させたいと願っています。
☆香港で子育てをするママへのメッセージ 香港はチャンスの街ですから、どんどん外に出て人と会って、今できることに挑戦してください。素晴らしいアドベンチャーが待っています。ラ・レーチェ・リーグという母乳育児支援の会もお薦めです。 |
10の質問
- 子どもの頃の夢はなんでしたか?
小さいときの文集などには、「お母さん」とあります。 アマチュアバンドのコンサートなどに出るようになった中学生のころは、縁の下の力持ち、 音を操る裏方の音響さん(サウンド・エンジニア)に憧れました。 (余談:父がそれは男の世界だと断言してそれまでになりましたが、当時のアナログ大型機材がデジタル軽量化した現在では、仕事場で若い女性の音響さんにお世話になることも増えてきました。まだまだ男性が圧倒的に多い世界なので、あなたは昔の私のヒーローだ、頑張ってねと声をかけています。:-)) - 思い描いていた理想、夢はどれか叶いましたか?
母になったので、一つは夢が叶いました(笑)。 - 将来の夢はなんですか?
香港の天水圍で始めた、地域住民間の交流促進のためのプロジェクト「ドラムアップ香港!」を継続可能な形で軌道に乗せることです。参加型のドラムサークルを通して音楽がより多くの人々に届き、ストレスを解消し、お互いを結びつける社会的接着剤として他の地域にも組み込まれていけたらと思います。 - ママとして心がけていることはなんですか?
話をよく聞いてあげることとと、手料理で健康な食生活の習慣を身につけること。 - 女子として心がけていることはなんですか?
愛嬌 - 子育てで一番つらかったことはなんですか?
娘がまだ幼児のころ、躾についてをきっかけに母と衝突が続き、丁度シングルマザーになりたての時だったので、ストレスが高かったですね。 - それをどうやって克服しましたか?
非暴力コミュニケーションを学ぶいい機会になりました!(笑)あと、日本人の素晴らしいコーチの助けで、自分をよりよく知ることにもなりました。 - リラックス法はなんですか?
踊ること。 - 好きな音楽、カラオケでよく歌う曲はなんですか?
ジャズ、レゲエ、そのときの気分によっていろいろ聴きます。 カラオケはあまり行かないですが、ユーミンの歌が好きです。 - マイブームな食べ物、美容法、本なんでも、おすすめを一つ教えてください。
ディトックス。昔は日本の芸能人もそのために来港してたほど、香港にはいろいろありますよ。
<あとがき>
「音楽に導かれて」というフレーズが印象的でした。エネルギッシュだけど、自然体でしなやかな精神の持ち主。香港に感謝という点、私も同感です。2011年に理工大学で行われたTED×youth@hkを見て、自分が苦手だと思っている人とでも思いもよらないハーモニーを奏でることができるかも、とポジティブな気持ちになりました。これからの活躍にも目が離せません。 今週日曜に行われるドラムサークル、みなさんも是非行ってみませんか?
〇日時:2014年4月27日午後2時~3時半
〇場所:Piazza Area C, Hong Kong Cultural Centre, Tsimshatsui (near the Hong Kong Museum of Art) 詳しくはこちらをご覧ください(すでに終了しました)。