インタビュー 香港ハンサムウーマンFile
File No. 6 大村 れい子 さん
平成3年(1991年)に主人の赴任に伴って香港へ来ました。当時は様々な習い事もしましたし、その目的もお友達との交際の一環で習い事の後みんなでランチという生活をしていました。まさかその習い事の一つが今の職業に繋がるとは全く想像していませんでした。そんな駐在生活が1年、一旦帰国。主人が転職し2か月後再び香港へ。
その後、香港の中国返還、アジア金融危機、SARS、リーマンショックなど様々な世の中の変化に翻弄され、主人の仕事もいつもいい時ばかりとは言えず、どん底と思うような時もありました。ただ、娘の教育だけはどんな状況になっても続けさせたいと思っていました。当時は日本人の子女は日本人学校に通うのが常識で、インターナショナルスクール(フレンチインター)に行っているお子さんは少なく、しかもIB(インターナショナルバカロレア)を初期に取り入れた学校だったため、とにかく情報がなかったのです。特に進路については手探り状態で必死でした。習い事もいつか役に立つかもしれないとピアノ、社交ダンスなど過密なスケジュールでも続けさせました。アマさんを雇うより、その分習い事をさせたいという一心で、家事と仕事、育児をこなすために朝家を出る前に夕飯の支度まで済ませ、目の回るような日々でした。
娘は高校の生物の牛の眼球の角膜を剥離する実験で「手先が器用だからお医者さんになったらいいよ」と先生に言われたのをきっかけに、医学の道を目指すようになりました。主人の父が医者だったこともあり自然に医学の道に導かれたのかもしれません。彼女が目指すイギリスの大学の医学部には日本人で合格した人はいなかったし、周りの先生方は無理だろうと思っていました。母として最期まで諦めずに神頼みまでしました。香港で学問の神様と言われている文武廟に行き、まずは願書に渦巻のお線香の煙をあてました。その時骨折中だったのですが、毎日タクシーで文武廟で願掛けをしました。松葉づえで敷居をまたぐのに四苦八苦していると、門番の人が中から椅子を持ってきてくれて「外でも願いは届くからここでお参りしなさい」と言われ、足が悪くても通い詰めました。その甲斐あってか学力試験をパスしたあと面接まで進み、最終的に奇跡的に合格を手にしました。周りから99%無理だと言われていた医学部受験でしたが、「諦めない」気持を持ち続け、娘と二人三脚で受験を乗り切ったのが良かったのだと思います。
親として成人するまでは娘にできるだけのことはしてあげたいという一心で、子育て・教育に全力投球でした。また、子育てと同時進行で以前講師の資格を取ったミニチュア粘土が徐々にお仕事に繋がるようになっていきました。ミニチュア粘土の作品は全て本部で認定された物のみ指導できるのですが、飲茶のミニチュアは私のオリジナルです。本部への申請、細かい修正、厳しい審査を経て認定を受け、香港らしい作品として定評があります。最初はお友達から講師を頼まれるようになり、教室を始めて今年で15年目、たくさんの生徒さんを指導してきました。私自身、資格が役にたった経験があるので、「資格は裏切らない」と実感を込めてお伝えしています。講師養成コースでは、長年の経験から得たコツなど生徒さんが指導者になった時にすぐに使える技を包み隠さずどんどん伝授しています。小さなお子さんがいて、習い事が難しいママたちのために出張授業も行っています。子育て中はなかなか自分の時間が取れないのはわかっているので、講師養成のコースで課題がたくさんあっても「無理しないでね。やれるところまでいいから」と各自のペースや能力に合わせて教えています。長く続けるためには無理しすぎないこと、とにかく継続が何より大事です。意外に思われるかもしれませんが、特別手先が器用なわけではありません。それ故に生徒さんがつまづき易いところ、失敗しやすいところが分り、自分が苦労した分、講師になったときにきめ細かく指導できるようになりました。とにかく亀のように歩みは緩やかでも、とことん諦めないことが私のモットーです。まだまだ高みを目指して頑張っています。新作の中国茶の作品も試行錯誤を経て、やっと完成しました。9月からこちらのクラスも始めます。
エルメスのバックが好きなので、単なるブランド好きと誤解されることが多いのですが、そういう事ではありません。エルメスは誰もが知る高級バックですが、私にとってはバック以上の存在です。きっかけは20年以上前、友人が「なかなか手に入らないバックだから予約しておいたわよ」と言われ、支払いの時値段を知ってびっくりしました。しかし、エルメスのバックは毎回素晴らしい人の縁をもたらしてくれます。私にとって人とのつながりを大切にしてくれる大事な物です。
私は、23年欠かさず毎月家族で(娘が留学してからは夫婦で)黄大仙にお参りに行っています。願掛けではなく、お礼参りです。ひと月、家族が無事に暮らせたことを報告し、感謝の気持を伝えるためです。特定の宗教はないのですが、香港の土地で暮せることに感謝したいので、香港の神様の代表格である黄大仙を選びました。感謝の心をいつも忘れずにいたいものですね。
☆このインタビューを読んだ方へのメッセージ 「 何事もあきらめないで」 |
10の質問
- 子どもの頃の夢はなんでしたか?
子供のころからなりたいという職業がなくていつも将来はいいお母さんになりたいと言って いました。 - 思い描いていた理想、夢はどれか叶いましたか?
娘が授かった事でいいお母さんかどうかはわかりませんが私のなかでは90バーセント叶いました。 妊婦の時や子育ては本当に楽しかったです。 - 将来の夢はなんですか?
2つあります。
1つはバカみたいですが孫とお揃いの洋服をきること(笑)。
もう一つは香港で日本人向けの老人ホームを経営すること。 - ママとして心がけていることはなんですか?
子供の夢ややりたい事が無理だとすべての人がいっても 最後まであきらめず子供を自分 だけは信じてあげること。
普通に過ごせることに感謝する事の大事さを教える。 なにかにつけてこれを物事に例えて話す。 - 女子として心がけていることはなんですか?
髪乱れは心の乱れ!どんな時でも髪の毛はきちんとする事を心がけています。
これはおばあちゃん、お母さんから学びました。 - 子育てで一番つらかったことはなんですか?
子供が学校で差別やいじめにあった時。 - それをどうやって克服しましたか?
母親としてではなく子供の親友や姉妹なった気持ちで子供によりそってあげました。 - リラックス法はなんですか?
リラックス方はやっぱり家の ソファーでワインを飲むこと。 - 好きな音楽、カラオケでよく歌う曲はなんですか?
古いけどユーミンの曲大好き。 カラオケは行きません。 - マイブームな食べ物、美容法、本なんでも、おすすめを一つ教えてください。
毎日かかさずパックすること! 高いパックでなくていいので毎日数分バックすると肌がぜったい違う気がします。
<あとがき>
楽しいお話は尽きず、インタビュアという立場を忘れてお話に引き込まれてしまいました。ばっちり決まった装いに謙虚で努力家で大らかなお人柄。娘さんの受験の願掛けや黄大仙へのお参りのエピソードも興味深く、感謝、継続、諦めない、のキーワードが心に響きました。ここまでわが子にコミットできるか?!いや、容易ではないです。
9月から始まる新作中国茶のクラスも香港らしくていいですね~詳しくはClay Boutiqueのブログをご覧ください。