絵本から得られるもの
絵本を読むこと、読み聞かせること、こんなことをじっくり考えるなんて、ひまな人だろうと思われるかもしれませんが、世の中のお父さん、お母さん、または子どもに関わる人たちにどうしても伝えたくて、分かりきったことかもしれませんが、時間を割いて読んでいただけたら、とても嬉しく思います。
プロフィール :
横井ルリ子さん 教育者教員経験を活かし、個人教授という立場で長年教育に携わる。現代の教育に疑問をもち「母のクラス」「こころのクラス」など独自の教育法を実践。最近は、読み聞かせ、読書、作文など国語教育にも力を入れている。在港16年。
『おさんぽおさんぽ』
ほろのたかこ作絵 こどものとも012
1999年6月号 福音館書店
かつて、小さな子どもたちとよく読んだこの本。わざわざ雨の日に長靴を履いて出かけるストーリーが妙に衝撃的だった。私達は声を出してこの本を読むのが、好きだった。水溜りを前に長靴を脱ぎ捨てて、バシャバシャバシャと音を立てながら水遊びをする場面が特にお気に入りだった。本に出ている活字がバシャ バシャ バシャと徐々に大きくなっているので、それに呼応するように私の声も少しずつ高くなっていった。すごい!活字にはこんな力があったんだ。
雨の日が待ち遠しい。一人ずつ傘をさして、長靴を履いて、雨の中へ駆け出していく。娘たちは、
「おかあさん、おさんぽおさんぽしていい?」
と遠慮がちに尋ねる。
「もちろん!」
小さな彼女たちと大きな私は長靴を脱ぎ捨てて、ビショビショになって遊んだ。
本当に楽しい想い出に残る一日だった。
石井桃子さんがいつも言っているあの言葉、「子どもを育てるということはもう一度人生を楽しめるということ」私は二度うなずいた。
共に遊んでくれた娘たち、ありがとう。
2010年6月11日
ある日の日記より