インタビュー くらす香港
くらす香港 弐「キラキラな香港だけでない 色んな香港を知ってほしい」 村上 友季子 さん
暮らしてみて見える・感じる香港を各フィールドで活躍する女性に伺いました。
「キラキラな香港だけでない 色んな香港を知ってほしい」
村上 友季子 さん
ファッションデザイナーYM Designworksデザイナー
ブログもっと知りたい香港
プロフィール
93年11月、神戸で勤めていたアパレル会社の香港支社にデザイナーとして赴任。それから20年あまり仕事中心だった生活スタイルを2014年ごろから仕事のペースを緩め在宅フリーランスにシフト。本業のニットデザイナーの傍ら、同時に今まで見過ごしていた香港の日常風景に目を向け、ブログ・facebookもっと知りたい香港, Instagram「萌える香港」で香港の隠れた魅力を発信中。
「返還と言う歴史的瞬間をこの地で過ごす貴重な体験」
日本にまだバブルの余韻が残っていた93年、世界中のアパレル会社が中国生産量を増やして行く時代。「英国から中国への返還と言う、150年も前に交わされた約束された歴史的な瞬間をこの地で過ごす貴重な体験は、マイナスなことは何もない」と言う事と「これからは中国市場が大きくなる。中国でブランドを立ち上げてみないか」と口説かれ、単身、香港にやって来ました。それから5年後、その会社がまさかの倒産。帰国するか残るか迷っていた頃、英国人の今の夫と知り合い、香港に留まることを決意。元上司と貿易会社を始め、がむしゃらに働きました。2003年に結婚。2007年にフリーランスに転身。
「日本人は仕事のために生活している、香港人は生活のために仕事している」
ビジネスの面で香港だから良かったと思えるのは、完全に男女平等なところです。
日本でもアパレル業界は女性が多い方ですが、管理職はまだまだ男性で、香港では性別に囚われずに仕事が出来ますね。それから、仕事上の決断・展開がスピーディで、香港人とは仕事の上で言い合いになる事がよくありますが、お互いの意見を出し合って方向性が決まれば割とあっさりしていて、後になってうじうじ不満を言ったりしない性格の人が多いのが楽ですね。それに、時間の使い方がはっきりしていて、仕事とプライベートの両方を楽しむ生活をしているのが良いですね。日本人は仕事のために生活している、香港人は生活のために仕事しているんじゃないかなと感じます。
「香港は華やかでパワフルなだけではない、色々な物を抱えている」
英国領時代から住みついて25年、住みやすくて大好きな香港が返還後、徐々に加速して巨大な中国に飲み込まれていくのを肌で感じます。返還後の香港が抱える切なさ、逃げ出した祖国に戻る香港人としての想い、これも香港の一面です。香港は華やかなでパワフルなだけではない、いろんな哀しさや切なさを持ちつつも、常に前向きなエネルギーで進もうとする力に、日々魅了されています。
「そろそろ香港を離れるかもしれない、もっと深く香港を知りたい」
充実した香港生活が20年を過ぎた頃、プライベートでは溺愛していた愛犬を介護して見送りました。そしてその頃から香港は中国化が加速するようになり、そろそろ、もしかしたら香港を離れる事になるのかも?と感じ始めた頃、こんなに長く暮らしたこの街を離れる前に、もっといろんな香港を見ておきたい。と思うようになりました。
中国南部、海に囲まれた小さな漁村が点在する島だった香港。ここがアヘン戦争と言う不名誉な戦争によって英国の植民地となり、そこへ祖国を捨て、自由を求めて命からがらやって来た中華香港人たちが人口の90%以上を占める街。まさに東洋と西洋が混ざり、独自の文化を築きながら、世界有数の大都市となった香港。
香港と言えば、百万ドルの夜景、絶品中華料理、ショッピングなどがイメージに浮かびますが、暮らしてみるとその大都会のすぐ裏にある大自然の絶景、キラキラショッピングモールの裏路地にある茶餐廳や青空市場。英国領時代に建てられたゴシック建築の教会のすぐそばに、もっと以前からそこに佇む道教の廟があり、風水に基づいて建てられた龍の通り道をくり抜いたビルがある。
西洋も東洋も、大都会も大自然も、キラキラもディープも、ホンモノもニセモノも、あれもこれも全部詰め込んだおもちゃ箱を、思いっきりひっくり返したような小さな街で、大声で笑い、怒鳴りあいながらも、支え合って『生き抜く』と言うことに一生懸命な人々。街全体に活気に満ちて、陽気で、パワー溢れるように見える香港の裏側にある、この地が持つ特異な歴史と人々が抱く切なさも、しっかり見て、そして伝える事が出来たら良いなと思っています。
10の質問:
1. 香港で一番驚いたこと/カルチャーショックだったことは何ですか?
飲酒運転の規制がなかった(返還前)
2. 香港のすごい、いいなと思うところは何ですか?
『自由』
3. 香港のちょっと残念、嫌だなと思うところは何ですか?
最初の頃は沢山ありました(汚いとかうるさいとか)が、
20年を過ぎた辺りから、そう言うのも含めて香港と思えるようになりました(笑)
4. 香港で食べた物で一番美味しかった料理は何ですか?
たくさんありますが、他でなかなかここまでのクオリティーは食べられない。と言う意味では北京ダッグかな。
5. 香港で食べた物で「これは無理!」/苦手という料理は何ですか?
臭豆腐
6. よく買うお土産を教えてください。
九龍城の豆板醤と豆鼓醤
7. 香港に来た親戚や友達が来た時案内する場所はどこですか?
定番だけど、ビクトリアピーク
8. ご自身にとってのパワースポット/好きな場所はどこですか?
屯門の青松観
9. 香港で得た最大の財産(有形・無形)は何ですか?
香港で知り合い、世界各地に移住した友達。
10. 香港で挑戦したい/やりたいことはありますか?それは何ですか?
新界各地で、5年、8年、10年に一度、最長では60年に一度と言う『太平清醮と言う村祭り』があると最近知りました。居る間に、もっと制覇したかったです。
これから香港に来る方・来たばかりの方へ応援メッセージ
大都会と大自然、大富豪と大庶民、小さな街に振り幅の広い魅力がいっぱい詰まった香港。他人の目を気にする事なく、自由にマイペースで、楽しく満喫して欲しいです。
〈あとがき〉
いつもブログを拝見していて、香港にはこんなにお寺があるんだ、そしてお寺の仏具のビジュアルの萌えるポイントを教えられ、自分が同じ場所に行っても気づかないような切り取り方に関心するばかりです。インタビューでは友季子さんの香港への深い洞察と愛を感じました。私も在住25年ですが、友季子さんを見習ってまだまだ新しい香港を探したいと思います。
聞き手:コンスミコ
Dec 22, 2018