絵本から得られるもの
絵本を読むこと、読み聞かせること、こんなことをじっくり考えるなんて、ひまな人だろうと思われるかもしれませんが、世の中のお父さん、お母さん、または子どもに関わる人たちにどうしても伝えたくて、分かりきったことかもしれませんが、時間を割いて読んでいただけたら、とても嬉しく思います。
プロフィール :
横井ルリ子さん 教育者教員経験を活かし、個人教授という立場で長年教育に携わる。現代の教育に疑問をもち「母のクラス」「こころのクラス」など独自の教育法を実践。最近は、読み聞かせ、読書、作文など国語教育にも力を入れている。在港16年。
声のお手紙
甥の涼太郎。4歳。まだひとりでは本が読めない。その涼太郎への誕生日プレゼント。今年は何にしようかなあ…。1ヶ月ほど前から 考えていた。私が選んだ絵本でも送ろうか。日本語の本しか読めない涼太郎に、私が日本から取り寄せた日本語の本を郵送するのも、逆輸入のようで、なんだか おかしい。あちらには、一歩家から踏み出せば、本屋だって、図書館だって、どこにでもある。
娘二人に協力を求め、三人で、三日三晩考えた。
ようやくプレゼントは決定。カセットテープに私たちの声を録音し、贈ることにした。 次女は涼太郎のためにお気に入りの絵本『かたつむりタクシー』、『ほっきょくぎつねものがたり』 を朗読し、長女は涼太郎の好きな『よるくま』を読んで聞かせた。そして習いたてのリコーダーで『きらきら星』を独奏し、『ふるさと』を独唱した。最後に私 たちは『おおきなうた』の大合唱でしめくくった。60分のテープは意外に長い。制作に一週間を要した。少し遅れてしまったが、喜んでもらえるという確信を 持って投函した。
半月後…
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お姉ちゃん、涼君へのプレゼントありがとう。
たむらしげるさんは涼太郎の好きな絵本作家です。
カセットテープを何度も繰り返し聞きながら、かたつむりタクシーってどうんな形かな
どこにお客をのせるんだろうね。という話に花が咲きました。
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絵のない絵本は彼の空想世界を刺激した。
目で読むお手紙と耳で聞くお手紙。
どちらも味わい深く、心にしみ入る。
「涼くん、おたん生日、おめでとう!」
2008年5月29日
ある日の日記より
* 『かたつむりタクシー』 たむらしげる作
福音館書店 こどものとも 年少版 1998年7月号
『ほっきょくぎつねものがたり』 シートン原作 チャイルド絵本館
『よるくま』 酒井駒子作 偕成社