絵本から得られるもの
絵本を読むこと、読み聞かせること、こんなことをじっくり考えるなんて、ひまな人だろうと思われるかもしれませんが、世の中のお父さん、お母さん、または子どもに関わる人たちにどうしても伝えたくて、分かりきったことかもしれませんが、時間を割いて読んでいただけたら、とても嬉しく思います。
プロフィール :
横井ルリ子さん 教育者教員経験を活かし、個人教授という立場で長年教育に携わる。現代の教育に疑問をもち「母のクラス」「こころのクラス」など独自の教育法を実践。最近は、読み聞かせ、読書、作文など国語教育にも力を入れている。在港16年。
『クリスマスのちいさなおくりもの』
こどものとも2006年12月1日号・福音館書店
アリスン・アトリー 作
上條由美子 訳
山内ふじ江 絵
もうすぐクリスマス。大人も子どももクリスマスが大好き。
今年はどんなプレゼントがもらえるのかなあ。
私はこのお話を読むまで、クリスマスがどんな日で、何のためにあるのかということを真剣に考えたことがなかった。日本人の私にとって、クリスマスは単なる宗教的な意味しかもたないお祭り行事の一つに過ぎなかった。
ストーリーはいたって簡単。お母さんが病気のため、クリスマスイブの晩になっても、その家ではクリスマスの用意ができていない。家主の代わりに、心配した猫とねずみが協力し合って、家主の代わりに、クリスマスケーキを作ったり、飾り付けをしたり・・・・・・。私はその中の猫とねずみのやり取りに頭を「がつーん」とやられた気がしたのだった。
中略
ねこ:「クリスマスイブだからって、あんまりずうずうしくするんじ
ゃないよ。そうさ、かざりつけはないんだよ。おかみさんはびょうきでにゅういんしているし、こどもたちだけじゃなんにもできないいだろ。だんなさんはすっかりふさぎこんでいるしね」
ねずみ1:「ねこさん、あんたがなんとかしてくださいよ。」
ねずみ2:「こんやはみんながなかよくするよるでしょ。」
ねこ:「なかよくするよるだって?ああ、そうだったね、こんやは。じゃあ、あたしもおまえたちをたべたりしないようにするよ」
(本文より抜粋)
中略
近年私のところを訪ねてくる子どもは離婚家庭が多い。ある子は両親の離婚の原因が自分にあるのではないかと自身を責め、また、ある子はなんでぼくにはみんながもっているような普通の家庭がないのだろうとため息をつく。
それぞれの家庭がそれぞれの事情を抱えていることは重々承知している。
「離婚は親にとっては『不幸の終わり』になり得ますが、子にとっては、長い『不幸の始まり』かもしれません。多くの子どもは親の離婚を望まず現状維持を求めます。」(読売新聞2011年 11月22日 人生案内 評論家 樋口恵子 一部抜粋)夫婦の関係は紙切れ一枚で白紙に戻すことができても、親子の関係間それ以上に複雑だ。
クリスマスはみんなが仲良くする日。第一次大戦中のクリスマスの日にはイギリス兵とドイツ兵が休戦し、一緒に食事やサッカーを楽しんだという逸話がある。子どもの健やかな成長のために、年に一度クリスマスのほんのひと時、事情あって別れた配偶者と「過去の時間」を共有し、「未来の時間」へつなげてはいかがだろうか。
2010年11月10日
ある日の日記より