絵本から得られるもの
絵本を読むこと、読み聞かせること、こんなことをじっくり考えるなんて、ひまな人だろうと思われるかもしれませんが、世の中のお父さん、お母さん、または子どもに関わる人たちにどうしても伝えたくて、分かりきったことかもしれませんが、時間を割いて読んでいただけたら、とても嬉しく思います。
プロフィール :
横井ルリ子さん 教育者教員経験を活かし、個人教授という立場で長年教育に携わる。現代の教育に疑問をもち「母のクラス」「こころのクラス」など独自の教育法を実践。最近は、読み聞かせ、読書、作文など国語教育にも力を入れている。在港16年。
『種採り物語』たくさんのふしぎ
さとう藍文 関戸勇写真 2004年8号
私のおじいちゃんは2009年7月2日、93歳で極楽へと旅立っていきました。
私の一番尊敬する人はおじいちゃんでした。亡くなった今も、やっぱりその座は譲れない。多くを 語らなかったおじいちゃんでした が、私の中の深いところにたくさんの思い出を残していたようで、日々の何んでもない時にふっと思います。あの言葉、この言葉。「野菜は、種から育てるもの だ。苗を買ってきちゃ、いかん。」今日もまた、ふと、思い出した。おじいちゃんの一言を。これは私が、小学生ぐらいのときに、聞いたことば。何十年もねか されて、しかし最近おじいちゃんは苗を買ってはいけない理由や、なぜ種から育てなければいけない理由は、教えてくれなかった。
「ひと粒の種。どんな野菜も、ひと粒の種から育ちます。
キュウリも、トマトも、ダイコンも、ニンジンも、ゴボウも、
そしてキャベツも、ハクサイも、レタスも、
たったひと粒の種を、土にまくことによって育っていくのです。」
(『種採り物語』 より抜粋)
こんな書き出しで始まり、野菜の種がどのように採取されるのかが詳しく説明されています。私はこの本を読んで、種から育てること の意味に、私なりの解釈をつけてみようと思いました。それは「循環」ではないだろうか。種は、芽を噴き、葉を繁らせ、やがて実を結び、その実が再び、種子 となって新しい世代へと続いていくのだから。
本の結びも「種の中には、親からうけついだ性質がふくまれています。
さらに、まかれた土地に適応して、元気に育つ力があります。
種はふしぎに落ち着いています。」(本文より)
「今年の夏、名古屋へ帰ったら、おじいちゃんの畑の野菜から種を採ろう」娘と約束を しました。私たちの新しい種採り物語が始まります。「おじいちゃーん」、心の中で叫んでみると、魔法の言葉が今でも私の目頭を熱くします。おじいちゃんが 私という畑に蒔いた種は、少しずつですが確実に生長しています。まだ芽を出していない種もたくさんあるので、大切に育てていきたいと思っています。
2010年1月9日
ある日の日記より