ドクター伊原のひとり言
伊原先生のプロファイル:
18歳で単身渡英。ロンドン大学医学部を卒業後、1988年にロンドン在住の邦人に対する診療を展開。英国家庭医療の黄金期にNHS制度の洗礼を受け、患者中心の24時間365日安心医療を志として診療にあたる。2017年、ロンドン医療センター香港診療所を開設。英国国営医療機構 医師免許選定委員、欧州日本人医師会元会長
Covid-19 ワクチンに関する追記といざと言う時のために買い置きしておきたい薬の話(序段)
最近香港政府発行のCovid-19 PCR検査の証明書の件で気になることが多発しているようなのでお知らせします。日本への渡航の際、香港政府が発行するCovid-19 PCR検査の結果証明書をお持ちになり日本便へのチェックインをされる際、また日本に到着後入国の際に証明書の記載事項が明確でないという理由で搭乗拒否をされたり日本到着後入国時を拒否されたりすることがあるようです。その為日本への渡航の際には日本政府規定の内容が明確に記載されている証明書を持参されることをお勧めします。弊院をはじめ多数の医療機関が適切な証明書を発行しております。領事館のサイトに各医療機関が紹介されております。
次がCovid-19ワクチンへの躊躇の件です。英国、米国内でのCovid-19ワクチンの接種率が50%を上回る状況下、欧州各国の状況も急ピッチでそれに近づく様相です。接種率が上がるにつれ国際コロナパスポート制度構築の件が話し合われ始めたようです。香港ではコロナ患者数また死者も少ないためCovid-19 ワクチンの接種率が現在20%程度と伸び悩んでおります。中国国内からは10-30%程度の方が接種を受けたという報告があります。日本では1回目接種を終えた方が9%、接種を完了した方が3%です。現在Covid-19に罹患後全く無症状の者が2/3と推定されております。1/3の方が発病し、発病された方のうち1/3がFOG MIND SYNDROME(Long Covidまたは霧心症候群)という後遺症に悩まされます。その回復にかかる時間はいまだはっきりしておりません。Covid-19に予防接種なしで罹患すると1/9の可能性でFOG MIND SYNDROMEに悩まされるということになります。FOG MIND SYNDROMEになってしまうと集中力がなくなるだけでなく場所や時間に関する情報もしっかり把握できなくなるとも報告されております。その上、症状軽快がいつになるかも不確かであることが現状です。各予防注射には副作用があります。しかし前回お話をさせていただいたように、接種の危険性と不接種の危険性を冷静に比較検討されるとこをお勧めします。予防接種後にCovid-19に罹患しても劇症化は防げ、また感染期間も短期化することがわかっております。
最後に妊娠中、授乳中などでも接種を希望される方が多数いらっしゃるようです。Covid-19ワクチンが新技術であり長期にわたる事績統計がないため、妊娠中・授乳中には接種を延期されるようお勧めしております。
それでは今回の本題であるべき、いざと言う時のために買い置きしておきたい薬の話をいたします。
いざという時に役立つ買い置き薬は添付写真の4種類です。今回はこの4種が夜間や旅先などで役立つという弊院の経験からの理由をご紹介します。
次回からは4種の薬の効能・使い方などを連載させていただきます。
ロンドン医療センターロンドン(その前身の伊原クリニックを含め)では過去30年にわたり24時間365日の安心医療と表し夜間無料電話相談を提供してきました。また必要に応じ電話相談後夜間緊急診察をさせていただいておりました。その経験からこれらの4種のお薬を買い置きしていただくと夜間や旅行先でのとっさの発病時に患者さん側も電話相談に応じる医師側も大変助かるということがわかっております。
まず病気の発病が何時かということを考えさせていただきます。一日は24時間です。しかし一般的に診療時間は8-12時間程度です。このことだけを考えても診療時間外に発病することが50-66%にのぼることを理解していただけます。また病理は発病後早めに治療を開始する方が治療期間が短くなることもわかっております。その他医療サービスに一貫した継続性があることも治療を成功させる大事な要因になります。そこで早めの医療介入とその一貫性継続性を提供するためにロンドン医療センターでは夜間の電話相談をさせていただくことになったのです。その長年の経験から夜間の緊急医療相談のうち92%の場合電話相談とその指示による家庭治療で患者さんを翌日まで安全に守ることが可能であることがわかっております。その際に必須となるのがこの4種の薬なのです。夜間時間外で相談をさせていただく際弊院の担当医師がこの薬をお持ちですかとお尋ねする回数の多いトップ4なのです。またその逆はこの4種のお薬で朝まで様子見が不可能な場合は緊急で時間外診察に来ていただいたり、最寄りの救急外来を紹介したり、救急車の手配をさせていただくような場合なのです。8%の夜間緊急医療相談がこの部類に入ります。
またロンドン医療センター本院では夜間電話相談の的確さを調査したこともあります。電話相談後患者さんが医師の指示に納得した場合が大多数で、医師が自分の指示に確信が持てた割合が90%という結果でした。その際医師は患者が翌朝まで安全であると確信した場合のみ、救急診察、救急外来紹介などをせず家庭治療をお勧めします。もちろん家庭治療を支持し病状急変などがあった場合には再度電話で状況を把握することもあります。遠隔地、社会的な状況で救急診察や救急外来受診が不可能な場合、夜中定期的に電話相談を行い救急受診が可能になるまで状況把握をさせていただいたこともあります。
ここでの問題は救急外来への来診を勧めた際、患者さんが語学の壁を理由に救急への来診を拒否することがあることです。その為、救急来診後電話で翻訳サービスをさせていただいたり、心筋梗塞、脳溢血などが疑われる場合には弊院の医師も救急病院へ出向くことを条件に救急車を呼んだり救急外来へ行っていただくこともあります。
このような長年の経緯を経て夜間・旅行中の発病の際、役立つ薬としてこの4種が重宝することが確認されております。
前置きはここまでにしてまず4種の薬の紹介をします。1)PARACETAMOL (鎮痛解熱剤、日本と米国ではACETOAMINOFENと呼ばれています)、2)CHLORPHENAMINE (抗ヒスタミン剤), 3)DIORALYTE (水分補給剤、DIORALYTEは商標です)、4)GAVISCON (制酸剤、GAVISCONは商標です)。1)と2)には小児用もありおって紹介いたします。
夜間・旅行先からお電話をいただいて急病等の相談をさせたいただく際、この4種のお薬で十中八九翌朝まで様子見が可能であるという弊院の経験です。これら4種の薬は極一般的な買い薬です。どこの薬局でもお求めになれるはずです。常備していただくと重宝です。よろしくお願いいたします。
Jun 10, 2021