カウンセリングルームから見える風景
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。
「よい教育を!」をアダにしない
香港という土地柄でしょうか。香港在住のママとの会話の中で、学校選び、バイリンガル教育は、話題に事欠きません。香港での学校選びは、日本人学校以外にも、インターナショナルスクール、ローカルスクール…とあります。そして、一口にインターナショナルスクールといってもそれぞれにまた、主要言語やカリキュラムの内容が様々であり、その選択肢の多さに特徴があります。また、親が教育に熱心な分、当然、人気のある学校は競争も激しくなり、受験のための塾や面接の練習なども大きなビジネスとなっています。いきおい、英語はもちろん、普通話も・・・と習わせたい言語が増えて、バイリンガルどころか、マルチリンガルとしての勉強も必要になってきます。
子どもを愛すればこそ、子どもの教育に熱心になるのは、ごくごく自然なことなのでしょう。今の親世代が育った日本もかつては、教育熱心な社会でした。バブル崩壊までは、「子どもをよい学校に行かせて、有名な大学にいれ、大企業に就職させれば、将来が安心」というわかりやすい成功の方程式がありました。それが、バブル崩壊以降は、教育方針のゆれもあって、迷走している感じがあります。
私はカウンセラーとして、多くの方にお会いします。そして、家族を基本単位としてみるので、勢い、子どもからお年寄り、一人のクライアントだけ対面するセッションから、カップルや親子、家族みんなとお会いするセッションまで、多岐にわたる形態で支援にかかわります。
そんな中でひしひしと感じていることは、親の「よい教育を!」との情熱が、子どもを苦しめることすらあるという皮肉な現実です。両親が日本人のお子さんを、英語の習得のためにインターナショナルスクールで育てた結果、学力不振と日本語への苦手感に悩む若者になった姿を見ることがあります。親は良かれと思って、ネイティブのような英語の発音が身につくのを喜んでいたのに、本人の中では、「実は英語だって、ネイティブのようにはしゃべれないから恥ずかしく思っている。ましてや日本語はもっと苦手で、日本人であること自体がつらい」と親子の認識には大きな隔たりがありました。
また、国際色豊かな家庭に生まれ、日本で進学校に進み、国内の有名大学、海外の有名大学院と有名会社への就職をした方にお目にかかったこともあります。語学の堪能さを活かした華やかな経歴に反して、「どんなにがんばっても自分に本当の自信は持てず、つねに不安にさいなまれている」との相談を受けました。
よい教育を!と頑張る、教育熱心な親御さんにこそ、自分が親世代から引き継いできた価値観、自分が子どもに伝えたい価値観、そして、お子さんの資質を見据えた教育指針を持っていただきたいと思います。そして、そこには、お子さんにかかわる親のチームワークも問われます。
2018年2月27日(火)に、ワークショップを開催する予定です。
タイトルは「バイリンガル教育のポイントと工夫 国際結婚カップル編」
国際結婚カップルでは、日本人カップルよりもお子さんの教育指針で、両親の意見の相違が問題になることが多々あります。悩みがより顕在化しやすいからこそ、今回ワークショップとして、お伝えしたいことがたくさんあります。そして、国際結婚カップルを対象にしていますが、内容は日本人カップル、シングルで子育てをされている方にも通じる内容です。