カウンセリングルームから見える風景

今年はどんな年でしたか?


カウンセリングルームから見える風景

Suomi Fujimori

臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。

 


今年はどんな年でしたか?

こんにちは。香港でカウンセラーをしている藤森です。
気がつけば、もうはや12月。一年が経つのは早いですね。

この一年はどんな年でしたか?
毎日が慌ただしくて、今年がどんな風に始まったのかを思い出すのにも、ちょっと時間がかかるかもしれません。もしくは、大きな出来事があって、「今年はいい年だったなぁ、忙しかったなぁ」、もしくは「大変だったなぁ」と感じる方もいるかもしれません。

私にとって、この一年は、自分が何者であるかを、世に打ち出していく年になりました。私はもともと、人前に出るのは嫌いだし、注目されるのも嫌です。できれば、「やることはやって、自分の責任は果たしておきますから、後のことはそっとしておいてください」というタイプでした。

そんな私が、昨年末に自分のホームページをたちあげました。仕事の都合上、自分の専門性やサービス内容を、分かりやすく伝えられるものが必要だと痛感して、やむをえず「ええい、やっちゃえ!」とやってみたというのが現状です。正直、自分の顔写真を誰もが見られるネット環境に置くこと自体に抵抗がありましたし、名前で検索をかけられると私の近況がわかるであろう状況にすることには、過去の経験もあって、大きな怖れがありました。

しかし、そのご縁もあって、香港ママの便利帳にコラムを書くようになりました。また、そこから私の存在を知ってもらって、Hong Kong LEIにインタビュー記事を載せてもらいました。その内容が企画として取り上げられて、バイリンガル教育に関するワークショップをする運びになりました。

カウンセラーは、治療関係のために、自分のプライベートについては、明かさないのが通例です。しかし、ワークショップでは、専門職としての自分だけでなく、参加者の多くの方と同じく、子どもの教育に思い悩む母として側面も交えながら進めて、それが、いい結果を生んだと感じています。

日本では、常に組織に属して働いてきた私にとって、香港で、一人の専門職として働いていくことには、いつもどこかしら手ごたえのなさや心もとなさがあったように思います。それは、「組織にいて、そこで求められていることを理解して、求められている役割をきちんと果たしていれば、自分自身を出さなくてもいい」そんな隠れ蓑のような自分を守ってくれるものを求めていたのだと、今はわかります。

実際、隠れ蓑を求めるのをあきらめて、自分自身を出していくと、たくさんの人が声をかけてくれるようになりました。それは私にとって、生き方の姿勢が180度変わってしまうような、青天の霹靂のような体験でした。

「私に不満のある人には、去ってもらえばいい。私を打ち出してみたら、私と一緒に何かを作り出していきたい人が集まってくる。そこから、自分もやりたいことを選んでやっていけばいい」と思えるようになりました。

この新しい境地に立ってみると、以前は、「周りの皆に満足してもらえるように、成果を出すにはどうすればいいだろう?自分の足りない部分を指摘されてしまうから、自分を出すことより、とにかく、目の前の仕事を一生懸命やろう」と漠然とした怖れの中で生きてきたことに気づいて、びっくりします。

そんな気づきから、今まで私が生きていた世界が「自分は足りない。それを知った人から、責められる」という、必ずしも現実にそぐわない怖れにとらわれた世界だったことに気づきました。そして、誰も責めてなどいなくても、ちょっと相手の不満足な顔を見るだけで、「ほら、やっぱり…」と足りない自分を指摘されたかのような気持ちになって、さらなる「足りないから責められる」の世界に住み続けていたのです。

怖れにとらわれて生きている限りは、どんなに頑張っても、果てしない怖れから逃れることはできません。無意識の怖れから、自分が一歩踏み出してみて、初めて、怖れから解放されることを選択できるようになります。こうして、私は「世界はこんなにも私に対して優しいのだ」と感じています。

皆さんにとって、今年はどんな年でしたか。
忙しいこの時期だからこそ、時間をとってじっくりと振りかえる時、驚きや喜びに満ちた瞬間がきっと見つかると思います。

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