カウンセリングルームから見える風景
臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。
子どもへのカウンセリング
香港でカウンセラーをしている藤森です。私は家族を対象としたカウンセリングをしています。したがって、いらっしゃる方が、大人であることもありますし、お子さんになる時もあります。お子さんが対象であっても、できる限り親御さんからのお話も聞けるようにしています。
ご相談の内容は、子どもの行動や発達が主なきっかけになります。就学前のお子さんであれば、バイリンガル教育も含めた言葉の相談、集団への適応、気になる行動などが多く聞かれます。また、小学校以降は、交友関係や登校しぶりなど学校に関するものが多くなります。中学校以降になると親子関係やコミュニケーションの難しさがきっかけになりますが、根本の課題は、メンタルヘルスから性の問題も含めて、多岐にわたってきます。いずれにせよ、発達の経過や小さい頃から見られる性格行動、所属していた集団環境などを含めて、保護者の方から丁寧にお話を聞くところから始まります。
子どもへのカウンセリングを考えている保護者の方から受ける質問には、以下のようなものがあります。
Q. 子どもは何歳からカウンセリングの対象になるのですが?
A. 0歳から、小学校に上がる前のお子さんについては、多くの場合、性格行動、発達といった親御さんから見た心配であることが多いようです。この場合には、カウンセリングというよりは、保護者の方への発達相談になります。通常、保護者の方から1時間ほどお話を聞きます。その後、お子さんと年齢に合ったおもちゃで遊んだりする中で、発達上の課題や人との関わり方を見させていただきます。通常は、保護者の方の心配されている内容に対する見立てと日常生活の中での関わり方について、後日書面にまとめてお伝えしています。(なお、臨床発達心理士という専門領域の範囲での見立てであって、診断名をつけることはできません)
小学生以降になると、お話や描画を通して、会話が成り立つようになります。本人が話したいという意欲を大切にしながら、本人から見た問題の所在や「こうしてほしい」という希望を聞いていきます。多くの場合は、本人の了解を得て、本人の希望が周りの大人に共有・対応されることで、問題が解決していくことが多いです(環境調整)。本人が「周りに言えない」と感じていたり、心理療法による効果が期待できる場合には、保護者の方の同意のもと、心理療法を受けていただきます。
Q. カウンセリングは何回受ければいいのですか?
A. 一概には言えませんが、初回の1時間半のセッションの後、書面で「見立てと対応」をお伝えすると、その中で、対応されていけるご家庭が多いように思います。段階を踏んで対応を試していただける中で、ちょうどいい対応が見つかっていきますし、困った感じも落ち着いていくようです。その中で、ソーシャルスキルトレーニングなど、定期的に通われたい希望があれば、2~4週間に1度程度、お子さんが通っていらっしゃって、合間に親御さんへのセッションを挟むこともあります。
Q.診断名が必要、薬の服用も視野にいれて相談したい時は、どうしたらいいですか?
A.ご希望に応じて、精神科医を紹介することはできます。また、お話を伺って、お薬の活用が望ましい場合には、専門医に相談されるようお勧めすることもあります。
大人でもお薬を飲むことに抵抗のある方はたくさんいます。ましてやお子さんが服用するとなると、「避けたい」と考える保護者の方はさらに多くなります。
抵抗があるからこそ、見立てがしっかりして、根本的な症状を見抜いてくれる専門性があること、患者の立場に立った良心的な処方を提案してくれること、また副作用の訴えや心配があれば真摯に耳を傾けてくれるお医者さんにかかることが、私は大切だと思います。お話を聞いて納得がいけば薬を処方してもらえばいいですし、そうでない方法も見つかることがあります。
なお、服薬は、症状を緩和するだけでなく、生活習慣や対人関係の改善に取り組みやすくしてくれる効果もあります。必要に応じた服薬とカウンセリングで、生活に変化をもたらして、成功体験を積むことで、自信をもって、お薬から卒業していけるケースを私はたくさん見ています。特にお子さんは、目の前の阻害要因が最小限に抑えられることで、本来持っている成長する力で課題を乗り越えていけると感じています。
子どもの持つ成長する力には、いつも感動を覚えます。周りの大人が一致団結した途端に、子どもが花開いていく瞬間に立ち会うことは、何よりの喜びです。より効果的に、お手伝いをしたいからこそ、私は家族単位、場合によっては、学校の先生など、周りの大人と協力していけるように心がけています。