カウンセリングルームから見える風景

怒りをおさめる3つのステップ


カウンセリングルームから見える風景

Suomi Fujimori

臨床発達心理士。2012年より香港に移住。個人・カップル・ファミリーを対象としたカウンセリングを、日本語・英語で提供しています。

 


怒りをおさめる3つのステップ

ついつい怒ってしまう、もしくは、「こんなに怒らなくてもよかったかな?」と思える場面で、大爆発してしまう…。そんな悩みをよく聞きます。また、自分では怒っているつもりはないのに、周りの人から「怒ってるでしょう?」って聞かれて嫌な気持ちになるという悩みも聞きます。

怒りはどちらかと言えば、ネガティブな感情と捉えられることが多いようです。確かに、怒ってる時は、決して気分のいい状態ではありません。エネルギーを消費してどっと疲れる、人によっては後から自分の行動に罪悪感を覚える人もいるでしょう。そして、人間関係に悪影響を与えることもあります。怒られる相手も、つらいですから、あなたの怒りを苦痛に感じているかもしれません。落ち着いてコミュニケーションを取ることが難しいと感じるようになります。そして、子どもたちが、大人の怒りの表現を日常的に見ることで、知らず知らずのうちに、大きな影響を受けていくことは珍しくありません。

カウンセリングの世界では、怒りは第2次感情(セカンダリーエモーション)と呼ばれています。では、怒りが第2次感情であれば、第1次感情は何でしょうか?それは、悲しさ、傷つき、不安、孤立、怖れなど、普段意識することが難しい感情です。繊細で傷つきやすい感情であるために、感じることに痛みや怖れを伴う感情です。多くの人にとっては、あまり感じたくなく、無意識のうちになかったことにされがちです。この第1次感情がつもりつもってあふれ出た時に、第2次感情である怒りがこみあげてきます。つまり、怒りそのものではなく、怒りの下にある第1次感情にこそ、焦点を当てる必要があるのです。しかし、多くの人は、第1次感情を正面から扱うよりは、思考に頼って理屈で処理をしたがります。実際、なぜ怒っているのかについて聞かれたならば、わりと簡単に理由を応えることができるかもしれません。

・「何度同じことを言っても、言うことを聞いてくれないから」
・「私を怒らせるようなことばかり、するから」
・もしくは、「気がついたら、キレちゃう」というのもあるかもしれません。

では、「怒りのその下にある感情は何でしょう?」と問いかけると、解決のために、目を向けるべき第1次感情が少しずつ見えてきます
・「何度言っても聞いてくれない」「無視されていると感じる」→ 傷ついている
・「怒らせてばかりいる」「私は大事にされていない」 → 悲しみ
・「怒り以外の感情は感じたくない」 → 恐怖

では、怒りをおさめるためには、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、第1次感情に早めに気づくこと、それを落ち着いて相手に伝えるための3つのステップをご紹介します。

①    怒りのパターンに気づく
どんな時にあなたは怒りますか?話を聞いてくれていないと思う時?自分の思った通りに物事が進んでいない時?相手の言葉や態度がきっかけでしょうか?それとも、余裕がなくなっているなどの状況が原因でしょうか?紙に書き出してみると、どんな信念や感情が潜んでいるのかが、見えやすくなります。

②第1次感情を探ってみましょう
怒りが一段落している時、一人になれる時に、怒りの下に潜んでいる自分の感情に目を向けてみましょう。悲しさ、傷つき、不安、孤立、怖れなど、普段はあまり目を向けていなかったものが見えてくると思います。それらを耐えられるだけ、少しだけ感じてみてください。繰り返していくうちに、耐えられる範囲は増えていき、第1次感情が第2次感情(怒り)へ変化するまでに少し時間を稼ぐことができるようになります。

③怒りをぶつけるのではなく、第1次感情を伝えましょう
第1次感情を感じることが安全になってきたら、少しずつコミュニケーションに活かしていきましょう。第1次感情を伝え、相手にどうしてほしいのかを具体的に伝えます。
「話を聞いてくれていないと思うと、悲しくなる。まずは最後まで聞いてほしい」
「そういう態度をとられると、傷つく。目を見てきちんと返事をしてほしい」
「いっぱいっぱいになると、余裕がないから、手伝ってほしい」

怒りは本来、自分の身を守ることを目的とした本能が生み出す、エネルギーの発露です。イヌやネコが怒りをむき出しにして、自分や子どもを守るために相手を威嚇する姿が、まさにそうでしょう。人間も同じく、自分を守る仕組みを備えており、時として怒りが活用されています。あなたは、自分や大切な人を守るために、怒りを適切に使えていますか?もし、怒りの扱いに困っているならば、この自分を守るためのSOSサインが上手く使えていないのかもしれません。

ご紹介した3つのステップを参考に、記録をつけてみましょう。自分で解決の糸口がみつかるかもしれません。カウンセリングもあなたの怒りやそのパターンを解消していくことをお手伝いできます。

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