ちゅったんの香港おばば
マミーと私、ときどき愉快な親戚たち
C家に嫁いで18年。オットは男ばかりの5人兄弟の末っ子。実の娘のように可愛がってくれるマミーとの関係は良好。あまり親しくない人からは「香港おばばと同居大変でしょ」と同情されるけど、この異文化交流を楽しんでます。マミーのほうがよっほど気を遣っているようです。マミーは、(ときに度を越した)世話好きで、変なところに潔癖で、義理人情に厚く、せっかちで、記憶力がよく、歴史好きで、料理嫌いで、かなり頑固で、行動力のある人だ。男に生まれた方が幸せだったかもしれない。面倒見がいいので、80歳を超えても息子たちの家族のために世話を焼いている。そのせいで、うちの家族は兄たち家族のトラブルにいつも巻き込まれている。香港では家族の付き合いが濃いので、それもしょうがない。そんな日常のエピソードを、気まぐれに連載しています。
お茶碗さえあれば
初めてフランス料理を食べたのは中三だったな〜。
学校側が卒業祝いを兼ねて、テーブルマナーも教えようという目的で3年生全員がホテルでフルコースを食べることになった。
テーブルには、微妙に形の違うナイフとフォークいくつも並び、グラスも水が入っているものの他にも空のグラスがあって緊張したのを覚えている。
何だか堅苦しいマナーのせいで味は忘れてしまったが、出されたものを食べないと次の料理がやってこないこと、フォークとナイフは外側から順番に使うこと、 スープは音をたてないこと、食べ終わったらナイフとフォークを揃えてお皿におくこと、だけはしっかり頭に入っている。
それにしても、フルコースは本当にたくさんの食器が必要なんだね。
それに引き換え、中華料理の食器は見事なほどにシンプル。
どんなお店に行っても、湯飲み茶碗+受け皿、お茶碗+受け皿、レンゲ、箸のセットでたいてい食器は何のヘンテツもない白。
中国人は実用主義の人たちだから、「食器はどんな高級でも食べられないでしょ」という答えが返ってきそう。
マミーの食器はその上をいくシンプルさ。
基本的には、お茶碗とお箸があれば全てオッケー。
飲み物はホット&アイスだって、お茶碗。水もお酒も。
(カフェオレボウルもお茶碗みたいだから、それもアリか。)
ケーキもお茶碗、お箸でいただく。
(ケーキ皿もフォークもあるのに・・・)
サンドイッチ、パンもお茶碗に入れて、お箸でパクパク。
(潔癖のマミーは手づかみなんてあり得ない!)
スナック菓子(本人は食べない)も、お茶碗+スプーン(孫用)
(袋に手を突っ込んで、バリバリなんて言語道断)
好物のゼリーだって、お茶碗で固めてペロリ。さすがにお箸は無理、レンゲ登場。
だから余計な食器(主に私個人の食器たちなど)はビニールで包んで棚の奥へ片付けられ(マミーは片付け魔)、普段使うものは台所の引き出しと棚で十分収納され、こじんまりとしている。
マミーとは対照的に、実家の母は大の料理好き、もてなし好き、食器好きで食器棚が2階と合わせると5つもある。その料理に しか使えない、応用の効かない食器がいっぱいある。例えは、茶碗蒸しの器とか、お吸い物椀、プルーツポンチのセット、パフェ用のグラス、ざるそば用のお猪 口、焼き魚用の皿、グラタン皿、カレー皿。これがマミー的には、ぜ〜んぶお茶碗1つで事が足りるのである。私も最初はいつも同じ食器って味気ないな〜と 思ってたけど、慣れるとこのシンプルさもすっきりして、これはこれでいいと思えるようになった。
が、やっぱり棚の奥で眠っている私の食器たちがちょっと不憫・・・。