ちゅったんの香港おばば
マミーと私、ときどき愉快な親戚たち
C家に嫁いで18年。オットは男ばかりの5人兄弟の末っ子。実の娘のように可愛がってくれるマミーとの関係は良好。あまり親しくない人からは「香港おばばと同居大変でしょ」と同情されるけど、この異文化交流を楽しんでます。マミーのほうがよっほど気を遣っているようです。マミーは、(ときに度を越した)世話好きで、変なところに潔癖で、義理人情に厚く、せっかちで、記憶力がよく、歴史好きで、料理嫌いで、かなり頑固で、行動力のある人だ。男に生まれた方が幸せだったかもしれない。面倒見がいいので、80歳を超えても息子たちの家族のために世話を焼いている。そのせいで、うちの家族は兄たち家族のトラブルにいつも巻き込まれている。香港では家族の付き合いが濃いので、それもしょうがない。そんな日常のエピソードを、気まぐれに連載しています。
コリアンダー風呂
7歳の長女が虫刺され跡みたいなポツポツが痛いと言うので水疱瘡かも疑う。
自分が水疱瘡になったのは幼稚園ぐらいで全然覚えてない。
日曜でかかりつけのお医者さんが休みなので、とりあえずマミーに水疱瘡かもって電話で話すとすっとんで帰ってきた。
これから街市にイムサイ(コリアンダー)を買いに行って、煎じてそれをお風呂にすると言う。
聞いただけでも臭そうだ。
料理に使うのに1ドル買ったら十分なのに10ドル分のコリアンダーを買う。
それを土瓶でぐつぐつ煎じる。
家中コリアンダーのエキゾチックでエスニックな香りを通り越してめまいがするくらい強烈な草の臭いが充満。
3歳次女も一緒にコリアンダー風呂に入れることに。
バスルームに行く前に服を脱がせようとしたら、絶叫!
脱がせる時に爪でひっかいた?
絶叫の原因を調べようと体のあちこちを見ても異常なし。
「どうしたの?」と聞くと泣き叫びながら「こ、こ、こわいのー」
何が?
「草がこわいのー」
まだ草の正体どこにも見えないのに、この臭いにおびえているらしい。
長女が最初恐る恐る湯船に入って「草の温泉みたいだ」と演技しても、「こわいのー」の繰り返し。
そんならタオルをコリアンダー水に浸して体を拭いても同じだろうと体を拭いてあげたら、
マミーが「そんなじゃダメダメ。お風呂に入れて!」
と言うので、まるで虐待されてるかのように泣き叫ぶ次女を湯船に入れると、泣き声がヒックヒックのしゃくりあげになって、しまいには至福の顔に。
2人はコリアンダーを体に擦り付けて、これいい~と温泉気分。
さっきの号泣はなんだったんだ。
マミーの勢いに押されて聞きそびれた、何でコリアンダー風呂に入るのか?の問題。
コリアンダーは漢方では熱を持つ食材、その要素が水泡の発疹を促す。
何で抑えないで促すかは、体の中に潜伏して出てこられない状態が体に毒なので、毒は早く体外に出すということらしい。
そして、月曜日。
コリアンダー風呂の効果はいかに?
あれ~、水泡どころかきれいさっぱり治ってるし、水疱瘡じゃなかったんだ。
でも、オットは医者に見せろというので、小児科へ行ったらやっぱり何でもなかった。
何だかな~、あんなに大騒ぎしてコリアンダー風呂やったのに。
そして次女が「草の温泉、入りたい」とつぶやいている。
お母さんはご免です。
でも、本当に水疱瘡になったらまたやるの~?
勘弁してよ~。