摂食障害
プロフィール
みぃまま
13歳の娘が2019年8月23日から9月27日まで香港の公立病院に摂食障害で入院しました。「摂食障害」の診断を受け、何をどうしていいかわからずネットでいろいろ検索してみましたが、香港での摂食障害の情報は無に等しいほどありませんでした。精神病だから知られると恥ずかしく、内緒にする人が多いそうです。摂食障害は難病で一番死亡率が高い精神病だそうですが、早期発見できちんと治療を受けると治る確率も高いものです。娘の体験が今後同じ症状で悩んでいる在住者の参考になればという思いから、こちらで発信させていただくことになりました。
入院先のお引越し
翌朝医者から公立病院への紹介状を渡され、退院することになった。その際に「医者には逆らわないことですよ。」なんて言われて気分悪い。
支払いは付き添いベッド1泊の800ドルのみ。入院費とドクターフィーは一応保険会社に請求書を送るけれどメンタルヘルスはカバーされていないから、後日自宅に請求がくるかもしれない旨を説明された。
タクシーで約15分のところにある次の病院に移動した。
穏やかだった私立病院に比べ、公立病院はガサガサしている。車いすに座って診察待ちの急患や、ストレッチャーで運ばれる病人の数の多さに圧倒された。
娘は怖くなったらしく、さっきの病院に戻りたいと言い出した。私の選択は間違っていたのだろうか。
Accident&Emergencyにある受付で手続きをし、小児青年科病棟に入院することになった。18歳以下はこの病棟に入院するようだ。
小児科病棟のドアの前で、セキュリティースタッフに入院カルテと香港IDを見せる。
スタッフは私の香港IDの番号を記入し、中までエスコ―トされる。
ドア横にあるベルを鳴らすと、中にいるスタッフがセキュリティーカメラで人物確認してから解錠してくれる。
中はいかにも小児科という雰囲気で、カラフルな動物の絵が壁に描かれていた。
さっきのごちゃごちゃしたところとは、別世界の静かな空間で娘も少し安心したよう。
紫の病院服に着替えさせられた後、身長と体重を測り、尿検査と血液検査を行った。
当直のドクターは今までの経緯などを娘に質問し、カルテに記入していた。
明日担当のドクターの診察を受けたあと、トリートメントプランを決めるとのこと。
今日(日曜日)は紹介状に書かれた担当のドクターはいないから、血液検査の結果によって今夜は家に帰ってもいいと言う。
娘は淡い期待を持ち洋服に着替えていたが、検査の結果、白血球の数値が低すぎるため外泊許可はおりなかった。
少し期待していただけに娘の落ち込みようはひどく、1時間以上大声で泣き叫んでいた。
小さい頃からあまり泣かない子だった娘がこんなに泣く姿ははじめて見た。
5人部屋の窓側のベッドで、ナースステーションから一番よく見えるところが娘のベッドになった。
部屋ごとにシャワーとトイレもついている。このトイレは入院患者専用トイレのため、付き添いの者は病棟の外にあるトイレを使う。
小児科病棟は24時間、一人は付き添いが可能。簡易ベッドも用意してくれるからお泊りもできる。
面会人はあらかじめ香港IDと名前と続柄を登録した18歳以上の3人までが可能で、それ以外の人は面会できない。
面会時間は毎日午後6時から8時まで、この時間帯だけ二人同時に面会ができる。
病院の規則を理解しましたという承諾書にサインをして入院手続きが完了し、娘の手首には患者番号とバーコードがついているリストバンドがつけられた。
薬は渡す前にバーコードで読み込み、本人確認しているようだ。
病院の食事は基本的に午前7時朝ごはん、午前10時のおやつ、正午お昼ごはん、午後3時のおやつ、午後6時の夕食、寝る前のおやつがある。
メニューは栄養士からの指示に従ったもので、患者によって量や種類が違う。
初日はベジタリアンメニューをリクエストしていたので、ごはん、白菜、豆腐にゆで卵をおまけしてつけてくれた。
見た目も悪く、健常者でも食べたくないようなまずそうな食事である。
ごはんも野菜に一口食べるのがやっと、ゆで卵だけは30分かけて全部食べた。
翌日栄養士と担当ドクターと相談してからミールプランに沿って食べ、量とかかった時間を記録するそうだ。
チェック柄のパジャマを支給されるが、娘は断固として着替えず、体重を測るときに着替える紫服以外はずっとTシャツと短パンで入院中過ごした。
心拍数が40台と低いため、寝る前は400カロリーある栄養ドリンクを飲んで、寝ている最中に心拍が停止しないようにする。
寝ている最中には30台になることもあり、そんなときは夜中に起こされて飲むこともあったようだ。
トイレに行くとき以外はずっと胸に心電図モニターをつけている。
娘のベッドにはBed Restと書かれた紙が貼ってあり、トイレに行く以外は病棟内も歩くのは許可されていない。
「行かないで!」と泣き叫ぶ娘を病室に残して去ったのは、娘が生まれてから今までの中で辛い瞬間トップスリーに入るに違いない。
夫は仕事で不在のため、母も一人泣きながら家路についた。
ネットで日本語検索して摂食障害について調べると「母親からの愛情不足が要因」という内容の記事が多い。
自分の育て方はいいのだろうかと常に不安なのが親というもので、どの母親でも思い当たる節はあるのではないだろうか。
凹んでいた時に病院で渡された資料にある最後のメッセージに救われた。
Take home message: Parents do not cause eating disorder, patients are not to blame for their eating disorder
摂食障害は、誰のせいでもない。落ち込んでいる場合ではない、治さないと!
(つづく)