さわじい先生の学びのコツ

“なぜ?“に応えるタイミング

手で学ぶ

さわじい先生の学びのコツ

epis Education Centre 代表 澤村重基

前回の東京オリンピックを数年後に控え高度経済成長に沸く昭和のある日、大阪に生まれる。父の転勤に伴い、京都・東京・静岡を転々として少年時代を過ごす。2002年、学習塾epis
Education Centreを設立。現在、香港・中国・オーストラリア・インドに8教室を展開し、自らも数学講師として教鞭をとる。「数学を学ぶことは、強く生きる方法を学ぶことだ」と信じている。趣味はランニングとダイビング。

 


“なぜ?“に応えるタイミング

真面目で真っ直ぐな優等生ほど、ちょっとしたことで躓いて算数が嫌いになってしまうことがあります。そんな事実をご存知だろうか。 

例えば5年生で分数のわり算を初めて習ったとき。算数の先生は言いました。「分数のわり算は、ひっくり返してかければ良いんだよっ!」って。もちろん、その通りです。「わり算」は逆数の「かけ算」ですから、分母と分子を入れ替えてかけてあげれば「一丁上がり」です。でも、こんなとき、真面目な子は考えてしまうのですよ、「なんで?」って。 

そのとき、算数の先生は「なぜ、ひっくり返してかけるのか」説明してくれたかもしれません。あるいは、説明してくれなかったのかもしれません。どちらにせよ、ひたむきな少年や少女は、まずは思うのですよ、「なぜ?」って。その疑問がぐるぐると頭に渦巻く中で、難解な説明を受けたとしても、思考が思考の邪魔をしてストンと胸の奥に落ちてくることは稀なのではないでしょうか。 

どうでしょう。分数のわり算はひっくり返してかける理由を、お父さんやお母さんはお子さんに説明してあげられるますか。それは、かなり難しいことではないでしょうか。それほど、子どもたちの、この「なぜ?」に応えてあげられることは困難なのです。東京の新大久保に海城中学校という男子校があります。この名門進学校が初めて帰国子女向け入試を行ったときに、このことを説明しなさいと言う問題が出されるほど、これは誰もがぶつかる普遍的な「なぜ?」なのです。 

こういう「なぜ?」に遭遇したとき、ひたむきな少年や少女の頭に「?」が渦巻いているうちに、算数の授業はドンドン先に進んで行ってしまいます。「みんな、わかったかな?」「じゃあ、この問題を10問解いてみましょう!」とかって、「なぜ?」を置き去りにして行ってしまうのです。気が付いたときには、この子は分数の計算が苦手だと、先生はお母さんに伝えていました。そして、いつの日か算数が嫌いになってしまいます。 

これには、さわじいは納得がいきません。そんな時、ひたむきな少年や少女に、さわじいなら、こう声をかけたいと思います。「ちょっとだけ、あなたの大切な“なぜ“は横に置いておきましょう」って。しばらくの間、分数のわり算が自在に計算できるようになるまで、その疑問は大切にとっておきましょう。そして、もう少し成長して、心に余裕ができたとき、わかるまで、その「なぜ?」に付き合ってあげまるよ、って。 

分数のわり算を教えるとき、そんな子が必ずいます。絶対です。そんなひたむきで愛おしい子を注意深く探しながら教えてあげて欲しい、とすべての算数の先生にお願いしたいと、私は思っています。

Apr 26, 2021

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