香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
つながり
バンクーバー行きのチケットを購入した時点で、なぜ冬休みではなく春休みに帰省するという判断をしてしまったのか。子ども達に責められながら、自分でも若干の後悔にさいなまれた。
日本人の知人の多くはクリスマスやお正月を日本で過ごすため、休暇が始まるとすぐに帰国してしまった。ほぼ毎年私の実家に帰省していた息子達も、祖父母と餅つきや初詣がしたかったようだ。日本と比べてレジャーが少ないこともあり、私は子ども達を退屈させないために、あれやこれやと企画した。
ありがたかったのは、こちらで出会った友人達の厚意だ。本格的なクリスマスツリーのデコレーションを経験させてもらったり、クリスマスディナーやランチに招待をしてもらったり、帰省しなかったからこそカナダ人のクリスマスを経験することができた。大人ばかりの食事会に向かう子ども達ははじめこそ乗り気でなかったものの、プレゼントをもらったり、カードゲームを教わったりと、楽しい時を過ごすことができ、「こんなクリスマスもいいね」と長男が言ってくれて嬉しかった。初めてのことだったので勝手がわからず、手土産程度のクリスマスプレゼントを持参して食事会に赴いたのだが、いただいたプレゼントが比べ物にならないほど高価なものだったので、すっかり恐縮してしまった。この歳になっても学ぶことは多い。
クリスマス当日は多くの店が休業する。朝9時の大通りに車がほとんど走っておらず驚いた。クリスマスがコマーシャルな意味で盛り上がるアジアとは少し様子が違う。クリスマスは、家族で静かに過ごす特別な日なのだ。しかし、翌日から「ボクシングデー」と呼ばれる大セールが始まり、ショッピングモールは人でごった返す。今後アジアでも「ボクシングデー」なるものが広がっていくのかもしれない。
毎年恒例と言われる「繰り返される年間行事」には愛着がある。桜の季節には花見に行きたくなるし、夏休みには友人と旅行に行きたいし、大晦日には祖父母の家でコタツに入ってテレビを見ながら夜ふかししたい。季節が巡ってくると、自然と頭の中に浮かぶそれらの恒例行事は私たちをノスタルジックな気持ちにさせる。今年はそれが叶わなかった代わりに、人との出会いとつながりの素晴らしさを実感できた。
移民の多いこの国は、個々の家庭に歴史があり、文化がある。それらに触れることができただけでも、子ども達にとっては良い経験になったのではないかと思う。そして、彼らが様々な人との出会いの中で、人間的な深みを持ってくれたらと願う。また、人とのつながりを彼らの強さに変えていってほしいとも願う。
