香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

長い夜が明けるまで

長い夜が明けるまで

香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


長い夜が明けるまで

久しぶりに友人夫婦とブランチをすることになり、ワクワクしながら身支度をしていたその時、腰に電撃が走った。「やっちまった…」そう思った。ぎっくり腰という悪夢再びだ。そのままベッドに滑り込み、夫と次男には直前のことなのでキャンセルせずに友人夫婦の元へ向かうように促した。心配そうな表情を浮かべながら、夫は次男を連れて出かけて行った。長男は私の世話を焼くために家に残ることになった。出不精の彼からしたら、それはそれで気楽な様子だったので、私も彼に甘えて、体の向きを変える際に力を貸してもらったり、飲み物をキッチンから持ってきてもらったりした。

スマートフォンで「ぎっくり腰の治し方」をサーチすると、安静が一番治りを遅らせるとあったので驚いた。かつては、なるべく安静にすることで治すというのが通説だったからだ。「痛みを恐れずに動け」と多くの専門家が提唱しており、腰を反らせる体操まであった。数ヶ月前にもぎっくり腰を発症して2週間近く体調を崩したので、今回は早く治して普通の生活に戻りたかった。ぎっくり腰はクセになるという。私の場合、恐らくは普段の姿勢の悪さが特定の部位に負担をかけ、何かの拍子にその時限爆弾を爆発させてしまうのだろう。こんなことが起こらぬようにと毎日体操を続けていたのだが、効果がなかったようだ。クセになってしまったからには、うまく付き合っていくしかない。

まずは、腰を反らせる体操を試みた。トドのようにベッドから転げ落ち、床にうつ伏せになってから、腕の力で上半身を起こして腰を反らせる。想像していたほどの痛みはなかった。極力通常の生活を心がけるようにと書いてあったので、長男に支えてもらいながら立ち上がり、リビングルームまで歩いた。ともすると腰から砕けて崩れそうになる。無理な姿勢は避けつつも、横にならずに普段通り動くように努力した。その甲斐あって、今回は数日後にはほぼ通常の生活に戻ることができた。

厄年なのかと思うほど、様々な問題が起こっては解消し、また新たな問題が起こる今日この頃。ただ、それを人に話してみると、私だけではなく多くの人もそんな経験をしているようだ。パンデミックという特殊な状況下で、知らず識らずのうちに精神的影響を受けているのかもしれないし、外出や体を動かす機会が減ったことで体がなまってしまったことも理由なのかもしれない。世界中の人々に同時に厄年がやってきたような2020年。些細な問題にどうしようもなく落ち込むこともあるけれど、「明けない夜はない」と自分に言い聞かせて、前を向くように心がけている。家族みんなが元気で仲良く居られるのなら、きっと今を振り返って笑って話せる日が来る。

時に不安に襲われ怯えるのは、私だけでもあなただけでもない。地球上のみんなが同じ宿命の中でもがきながら今を生きている。

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