香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

パンデミック

パンデミック

香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


パンデミック

イタリア北部に住む友人にメールを送った。彼が、そして彼の家族が無事なのかを確認したかったからだ。15年以上前、私と夫はモントリオール留学の際に知り合った彼をイタリアまで訪ね、自宅に泊めてもらい、彼の家族と楽しい時間を過ごした。コロナウイルスによるパンデミック、感染拡大のスピードが速すぎて戸惑う。中でもイタリアは中国本土よりも死者を出している。医療崩壊と報道される中、友人がどのように日々を過ごしているのか気がかりだった。彼のご両親も高齢になっているので心配だ。

翌日には彼からの返信を受け取り、彼も彼の家族も無事だとわかってほっとした。ただ、ウイルスとの戦いはまだ終わっていない。今後もしばらくこの異常事態が続くだろう。

そんな中、メキシコに住む友人から私自身もメッセージを受け取る。私の身を案じてくれてのことだろう。お互いの無事を確認しつつ、この世界的に広がる感染症について情報交換をした。メキシコでも感染者が増えており、状況は日に日に悪くなるという。彼もモントリオール時代のクラスメイトの一人だ。

ニューヨークに住む大学時代の友人や、オランダに住む幼馴染、もちろん香港に住む友人たちにも連絡し、各国の政策や人々の様子などを聞く。世界のどこに住んでいても、皆が同じ敵に怯えながら過ごしている。こんな経験は初めてだ。他人事ではいられない。いつ自分が感染してもおかしくない。最悪、命を落とす可能性もある。ニュースを見るためにテレビに釘付けになっていると、時折絵も言われぬ恐怖心に襲われる。人類というのは、これほどまでに脆いものなのかと愕然とする。そして、この感染症が感染症としての恐怖だけでなく、各国の思惑の中、政治的な問題として大きくならないだろうか、世界の分断がさらに進んでしまうのではないかと不安になる。

遠く離れた友人たちとお互いを想い合い、絆を再確認する機会となった今回のパンデミック。私達は一つのチームとなって未知のウイルスと闘うこともできれば、差別や憎悪を膨らませてウイルス以外の敵を作り、別の災害を引き起こすこともありうる。

人類の歴史は感染症との戦いだとよく言われる。何度もなんども人類が乗り越えてきた問題だ。科学や医学がここまで進化したのだから、ワクチンや治療薬が発明されるのも時間の問題だろう。ただ、人間の本質というのはいつも変わらない。自分が犠牲者になるまでは他人事だと思ってしまう。一部の専門家が警告しているように、これは歴史の転換点なのだと私も思う。国や宗教を越えて、個々人が最善の方法で自身と家族、そして人類の未来を守る覚悟を持たなくてはいけない。

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