香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
不登校
衝撃的な数字を目にした。現在日本の中学生のうち、年間30日以上学校を欠席するいわゆる「不登校児童」は11万人弱いるらしい。この数字は病気や経済的理由で欠席している児童を含まないものだ。しかも、学校には行くが教室に入れない、遅刻や早退が多いなど「隠れ不登校」と呼ばれる児童の数は33万人。日本の全中学生の8人に一人が学校に”NO”を突きつけているのだという。これは、過去最多の数字だ。
次男が通っている公立小学校にも不登校の児童がたくさんいる。私の身近にも数人いるほど、この不登校問題は他人事ではない状況だ。うちの小学校では特に、欧米から帰国した子どもが日本の学校のシステムやスタイルに馴染めず、登校できなくなるケースが多い。学校の登下校に付き添ったり、給食の時間にサポートに行ったりしているお母さんを知っている。なぜそれほどまでに、子どもにとって学校が場所になってしまったのだろう。
この問題の背景は複雑で、個々の児童により不登校になる原因も違うため、解決策を見出すのはとても難しい。私が学生だった時代は、今よりもずっと教師や学校に管理される環境の中で学校生活を送らなければならなかった。登校すると、前髪の長さやスカートの長さをチェックされ、部活も強制的に全員参加だった。いじめもあったし、上級生と下級生の上下関係も厳しく、一学年上の先輩への言葉遣いが原因で呼び出され、詰め寄られるなんてこともあった。けれど不登校になる学生はほとんどいなかった。今と何が違っていたのだろう。
あの頃は自分自身が子どもだったため、学校制度の問題点など考える知恵もなく、あるがままを受け入れていた気がする。高度経済成長期の親達は忙しく、学校や先生に対する信頼も大きかったこと、彼らが戦後すぐに誕生した世代で、権力のある者に従うことに抵抗がなかったことなどが既存の制度を盲目的に受け入れる土壌を作っていたのではないかと思う。
情報社会に生きる私達が親になると、教師や学校を客観的に見るようになった。学校制度を海外のものと比較してしまう。国を発展させながらも子ども達が幸せに暮している国外の例を目にしたり耳にしたりする。数多くの専門家が指摘する日本の学校システムの問題点に共感したりもする。そして、先回りするように子どもの学校生活に問題が起きていないか気を配るのだ。私自身、知らず知らずのうちに子ども達にも学校が完璧なシステムで運営されているのではないと認識させてしまっている。悩ましい。思考を停止して全てを受け入れてしまう人間にしたくないのに、様々な問題を考えさせることで子どもが学校に通うことを苦痛にしてしまう可能性もある。幸い我が子は元気に学校に通ってくれているが、突然学校に行けなくなる日が来ないとも限らない。
結論としては、やはり日本の学校制度は見直さなければならない時期にあるのだと思う。管理し、集団を作るという学校のあり方は世界的に見ると時代遅れだ。それが窮屈でしんどいと感じる子どもが増えたという事実が、新しい学校制度に切り替えるべきだと物語っているように思う。大人たちの覚悟、勇気が問われているのではないか。学校は子どもたちのために存在するという当たり前のことにそろそろ気づくべきだ。
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