香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

変化

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香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


変化

気がつけば、街路樹が赤や黄色に色づき始めている。窓を開けるとひんやりとした空気が入り込んできた。街を行き交う人たちの多くはダウンジャケットやコートを着ていて、暑かった日本の夏が今は遠い夢のようだ。

 

子ども達の学校が始まって2週間くらいは1人の時間を持て余し、次男のお迎えの時までずっとNetflixで韓国ドラマを見てしまう悲しい日々を送っていたのだが、登録していた「Language Exchange」のサイトで知り合ったカナダ人の友人とカフェで話をしたり、これまたウェブサイトでピアノの先生を見つけ出しピアノレッスンに通うことになったりと、今では1週間があっという間に過ぎていくようになった。

 

ここは秋から雨のシーズン。意識的に外に出なければ精神的に参ってしまうこともあると知人から聞いていたので、本格的な雨季に入る前に積極的にスケジュールを埋めていく方法を考えた。大阪に住んでいた頃も週に一度は英会話のクラスに通っていたこともあり、拙いながらも英語でのコミュニケーションが可能だったため、素晴らしい出会いに恵まれた。

 

はじめの一歩を踏み出すのには勇気が必要なのだが、その先は自然とつながりが展開していくものだ。ネットの世界に対してまだ多少の疑心暗鬼を拭えない世代なので、Language Exchangeのサイトに登録することにすら決心するまでに数日を要した。日本語を学びたいと思って連絡をくれる人がいても、相手が男性で電話番号などを聞かれるとついつい警戒してしまい、結果的に音信不通になることもあった。この失敗を教訓に数人とメッセージのやり取りを続けた結果、実際に会ってお茶したり、日頃の些細な問題を相談したりする友人を得ることもできた。

 

新しい友人ができると、新しい自分を発見するように思う。これはとても面白い。

 

人間は無意識のうちに相手に自分を合わせたり、相手からの影響を受けてキャラクターが変わったりするものだ。もちろん芯となる部分は変わらないので、別人になるわけではないが、ポジティブな人と一緒の時は自分もポジティブに寄り、ネガティブな人と一緒の時は少しネガティブに引っ張られることが誰にでもあると思う。日々自分自身もキャラクターを多少変化させながら、付き合う相手との最適な関係が成り立つよう探るのだ。

 

ここで知り合った友人達は日本のママ友達とは違い、私とそもそものフィールドが異なる。子供の学校やランチに行くレストランなどすっかり慣れ親しんだ話題は出てこない。知らない分野の話を外国語で理解しようとすれば、自ずと謙虚な気持ちにもなる。新鮮な感覚だ。

 

ゼロから始めるピアノも私を子供のような気持ちにさせる。「できないけれどやってみたい、できるようになりたい」という気持ちはずいぶん前に忘れてしまっていたものだ。今の私の心が目に見えたなら、きっと初々しい姿をしていると思う。

 

少し前まで、ベッドに入って眠れずに天井を見上げていると、自分が高い山と山の間に渡された細い綱を懸命にバランスをとりながら渡る「綱渡り」をしているイメージが頭に浮かんで、えも言われぬ不安を感じたものだが、今はそれもなくなった。ちっぽけな自分に変わりはないが、もう弱くはない気がしている。

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