香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
夏休み
7月に入った。香港の子ども達はすでに夏休みがスタートしている頃だろう。家族旅行に出かけたり、留学に行ったりする子どもは日本より多いに違いない。
日本の公立学校の夏休みは7月20日前後にスタートするのが一般的だ。香港の学校より1ヶ月近く短いことになる。暑い7月の登下校は見るからにしんどそうだ。ジリジリと音が聞こえそうな太陽の下を、重いランドセルを背負い、歩いて学校に通う。学校までの距離が長い場合、片道20分ほど歩く子もいる。
ある小学校の先生がツイッターでつぶやいた内容が話題になった。同僚の先生が自費で扇風機を購入し、自身が担任するクラスに設置したので、扇風機を購入していない自分に生徒達から苦情が出た、というものだ。日本の夏は、年々暑くなっているように思う。地球温暖化のせいかもしれない。きっとそうだろう。35度を超えたって、もう誰も驚かない。しかし、教室にエアコンが設置されていない学校があることには驚いた。そして、文部科学省のホームページを覗いたところ、昨年度の調査では、日本全国の公立学校でエアコン設備設置率は41,7%。なんと半数にも満たない。驚きが止まらない。
私などでは知り得ない、色々な事情があるのかもしれないし、人によって様々な意見があることも承知はしているが、あえて私の個人的な意見を言うと、夏休みは長くていいと思う。そして、宿題はなくていいと思う。せめて夏休みくらいは、ストレスから解放されてもいい。もちろんゲームばかりするような休みにしてしまっては無意味だが、普段できないことにチャレンジする時間が毎年与えられたら、もう少し面白い人間がこの国にも増えるだろう。しかし、悲しいかな現実は真逆だ。昨年、静岡県のある町では夏休みを16日程度に短縮した。これまで行われていなかった小学校での英語教育など、必要な授業自体が増えているからだそうだ。大阪市でも1週間ほどの夏休みの短縮があった。
香港のように6月で学年が終了する場合、夏休みの宿題はない学校が多い。長男も香港の学校に通っていた頃、夏休みの宿題はなかった。日本に帰省して従兄弟に自慢していたのを覚えている。日本の学校は4月始まり3月終了なので、夏休みの宿題も山のように出る。旅行には宿題持参で出かけるのだ。中学受験を控えていたりすると、夏休みは学校の代わりに塾に通う生活に変わるだけ。
走り続けていては見逃してしまうものがたくさんある。立ち止まらなくては見えないものが。子どもにしかない感受性をどこで発揮するんだろう。夏休みは1日中ボーっと蟻を見つめていたっていいんじゃないか、子どもはそうあるべきじゃないか…と思う。これが少数派の意見だと分かってはいるが…。私が子どもだった頃、夏休みは暇だった。ひまわり畑でひまわりの種をほじくったり、小川に架かる橋から飛び降りて、足首がジーンとしびれる感覚を楽しんだりした。馬鹿げた遊びの思い出が、私の人生を彩っている。
子ども達にも、楽しい夏の思い出をいっぱい作って欲しい。彼らの人生の彩りになるような思い出を。
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