香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

One day passの旅

One day passの旅

香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


One day passの旅

我が家から歩いて10分ほどのところに電車の最寄駅がある。切符を購入して乗車するのだが、切符には目的地までの片道券であるシングルチケットと1日乗り放題のOne day passというものがあり、そのOne day passを使って近隣の町を探索する「ショートトリップ」に出かけるのが私たちの休日の楽しみになった。

ほぼ各駅で下車して、駅の周りを見て歩く。線路の向こうに大きな川が流れていることを発見したり、意外な場所に工場を見つけたり、公園で野生のアライグマと遭遇して写真を撮ったりしたこともある。おしゃれな街並みの中に素敵なイタリアンレストランを見つければ、そこでランチをし、電車の中から公園を見つければ、次の駅で降りてその公園でリスを追いかける。何の予定も立てぬまま出発して、偶然に出会うものを楽しむのだ。

車窓からの景色、行き交う人々などを観察していると、ハングルの看板が多い韓国系移民の街、インドの装束を身につけた人々が多いインド系移民の街などに気づく。私たちが住んでいる地域は中華系の移民が多い。ショッピングモール丸ごと中国だったりして、一歩その空間に入ればここがカナダであることを忘れてしまうくらい。匂いも香港の街市と全く同じだ。

同じ列車に乗り合わせる様々な人々。その人たちから聞こえる様々な言語。それが自然なことである環境に私たちも慣れてきた。

余談ではあるが、ここには日本人街がない。日本人はカナダのローカルに溶け込んで個々に生活している人が多いようだ。次男の小学校にも数人の日本人もしくは日系の方がいるようだが、お互いが日本人だからという理由だけでは親しくならない。これは非常に興味深いテーマだなと思った。日本国内では集団を重んじ、協調性を重んじ、群れの中で生きる術を幼い頃から教え込む国民が、国境を越えると一匹狼になることも辞さないなんて、どのような心理的変化が発生しているのか研究してみたいものだ。

さて、今までは近場の郊外の街ばかり探索していたので、今度の週末はダウンタウンの方に向かってみようと長男が提案してきた。観光客向けのお店やレストランも多いので、ショッピングや食事も楽しめそうだ。そこまでの乗り換えは、鉄道マニアの長男にお任せする。次男は珍しい生き物に遭遇できたら満足だろう。ここには野生のスカンクも生息していると友人から聞いた。近づくと危険だが、本物を見てみたい。

雨続きのこの街に、やっと今朝、太陽が顔を見せた。気持ちも一気に明るくなる。数日後の週末も、爽やかな秋晴れになるといいな。どんな旅になるのか、今から心おどる。

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