香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
不公平な入学試験
少し前、ある医科大学の入学試験で女子や多浪生を不利にするための得点調整があったことが発覚し、世間を騒がせた。女子受験者や4浪の男子受験者は100点満点を取っても、最大80点しか得られないよう得点が操作されていたのだ。しかも、このような不正を行っていた大学が他にも多数あったことが後に明らかになる。大学受験においても、チャンスは公平に与えられない。驚きと憤りを禁じえなかった。
一般的には、男子学生よりも女子学生の方が勤勉だ。長男の話では、同級生の中で成績優秀な学生の多くは女子、進級が難しいと注意を受ける学生の多くは男子だという。女子のママが知っているテストやレポートの情報を男子のママは知らない。中学校に進学した際、ある友人が「女子のママと連絡先を交換しておいたほうがいいよ。男子からは学校の情報が入ってこないから」と助言してくれた。的を得た助言だった。学習意欲や向上心を女子と比較するなんてナンセンスなのだと思い知らされること度々。生物学的にも女子の方が早熟だ。特にこの年頃は男女間で精神年齢に大きなギャップがあることは間違いない。もちろん個人差はあるが、親に尻を叩かれずとも学問に励むのは圧倒的に女子なのである。
女子が優秀になり、社会進出をして、確たる地位を築くことをよく思わない輩がいるということだろうか。私自身「女の子は大学なんて行かなくてもいい」と言われた経験もあるので、実力主義とは程遠い性差別がこの社会に存在していることを学生時代から思い知らされてきた。そして、不服ながらも「世の中はそんなもの」だと思って生きてきた。しかし、所謂先進国では男女平等社会が進んでいる。カナダの首相が新内閣発足の際に閣僚の半数を女性にした理由を記者に尋ねられ、「なぜなら2015年だからだよ」と答えた話は有名だ。イギリスもドイツもニュージーランドも、政治のリーダーは女性が勤めている。
さて、受験の話に戻ろう。先日、小学6年生の娘を持つ友人と食事をした。中学受験のための塾通いで忙しそうだ。志望校の話をしていた時に衝撃の真実を知った。私立中学の偏差値が、男子と女子で違うというのだ。同じ学校を受験する場合でも、女子の偏差値は男子の偏差値よりも高い。つまり、男子よりも相当高い得点を得なければ、女子は合格できないというのだ。先に紹介した大学入試の不祥事による教訓は全く活かされず、相も変わらぬ男女差別の状況が私立中学入学試験でもまかり通っているのである。
不公平な仕組みの中で、「女性が活躍する社会」などというスローガンだけが白々しく一人歩きしている現状に嫌気がさす。努力する女子が報われる社会が待ち遠しい。