香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

迷惑ってなんだろう

迷惑ってなんだろう

香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


迷惑ってなんだろう

先日、次男の学校が創立記念日でお休みになった。平日はどこに遊びに出かけても人が少なく得した気分になるものだ。次男のリクエストで近くの水族館に行くことにした。水族館まで電車で数駅。乗客も少なく2人でシートに座ってお喋りをしていると、二駅目で幼稚園児達がたくさん乗り込んできた。お揃いの帽子をかぶり、みんなリュックを背負っている。遠足かなあ…と微笑ましく見守っていると、引率の保育士さんが「シーッ」と子ども達が騒ぐ前から制している。電車が揺れるとヨタヨタしながらひとかたまりになって踏み堪える園児達。小声で誰かが声を発するたびに、「シーッ」という保育士さんの声が車両に響き渡る。園児達が電車に乗っていたのは10分弱でほんの数駅だが、その間に子供達の声は殆ど聞こえず、「シーッ」と制する保育士さんの声が20回ほど聞こえた。私は次男と顔を見合わせた。「全然うるさくないのにね」と彼が私の耳元で囁いた。

幼稚園児のおしゃべりや笑い声は、受け取る側によって幸福の象徴にもなれば、迷惑な騒音にもなる。日本では電車やバスの中で子どもの話し声や泣き声がトラブルの原因になることが少なくない。実際に私の友人も、3人の子どもを連れて東京で電車に乗った時、一番下の子がぐずり出し、近くにいた男性に静かにさせろと怒鳴られたそうだ。また、数年前には「混みあう時間帯にはベビーカーを電車内に持ち込むな」という声が大勢からあがって、賛否両論大きな話題になった。ストレス社会では弱者や少数派を思いやる余裕がなくなってしまうのかもしれない。

私は子どもが小さかった頃は香港に住んでいたので、子どもと電車やバスに乗ると必ず席を譲ってもらえた。子どもがぐずっても嫌な顔をされたことはない。香港は子どもに優しい街だったとあらためて思う。

大人数の園児達を連れて電車に乗らねばならない保育士さんは、同じ電車に乗り合わせた乗客に迷惑をかけないように、神経をすり減らしていたことだろう。楽しい遠足だが、電車移動は園児達には我慢の時間になったのではないか。こんなに幼い頃から、電車内では声を出してはいけないと教え込まれ、いつかそれがあたりまえになっていく。そして、少し大きな声で話す人がいると、迷惑だと感じる大人になってしまうのだろうか。

多少のことは許し許される社会の方が生きやすい。子どもがもっとのびのびと参加できる社会になるといいのになあと思う1日だった。

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