香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
アウトプット
クリスマスとお正月が過ぎていく間に、我が家ではまたLEGOが増えた。
日本からカナダに移ってきた際には、持って来られる荷物にも限界があるため、次男が所有するLEGOのほとんどを私の実家に置いてきたのだが、気がつくと既に、部屋のあちこちにLEGOが転がっているという以前と同じ状況になっている。
LEGO以外のおもちゃに関して言えば、流行り廃りが激しくて、あまり購入したくないというのが本音だが、LEGOは次男が幼児の頃から現在まで一貫して遊べている上、LEGOの難易度を上げることで大人まで楽しむことができるので、少々値は張るものの、その価値は認めざるをえない。しかも、難易度の高いLEGOを完成させるためには相当の時間を要し、集中力が不可欠だ。この冬彼が完成させたLEGOのランドローバーは、1日5時間、計3日ほどかけて組み立てたものだ。
そして次男はこれらのLEGOでストップモーションの映像を作る。これはLEGOのフィギュアなどを少し動かしては写真を撮り、また少し動かしては写真を撮るという作業を繰り返し、すべての写真を連続して並べると、LEGOフィギュアが動いているように見えてストーリーになっているというものだ。YouTubeなどを見ながら独学でその方法を習得したらしい。もちろんまだ拙い作品ばかりだが、創造力や集中力が身につくので、親としてはありがたい。
最近はテレビを見る人が減っているという。私が子供だった時代には、みんながテレビに夢中だった。人気番組が放送された翌朝には、学校でみんながその番組の話をする。人気コメディアンの真似をしたり、人気ドラマの主題歌を歌ったり、多くの人が同じものに熱中するという現象が起こっていたように思う。しかし、今は時代が違う。インターネットの普及で、各々が好みのエンターテイメントを選んで楽しむようになり、大勢の人が同じものに夢中になることは稀になった。我が家でもテレビは見ない。私は教育系のYouTubeで知的好奇心を満たし、長男は音楽系のYouTubeで新しい音を求め、次男は映画やクリエイティブ系のYouTubeを見ながら、何かを学んでいる。YouTubeでさえも、急速な勢いで進化していることに気づく。そして、情報を送り出す側と受け取る側に人は分かれていくのだろう。
みんなが同じ情報で一喜一憂する時代は人々を均一化してしまい、時代遅れで面白くない。ただ、情報にあふれたように見える現代は、選択する情報の偏りを生む。偏った情報の受け身になるばかりで、考察せず、アウトプットもしない場合、自分自身が空っぽになってしまうこともあり得ると私は考える。そして、社会にそんな人間が増えることに一抹の不安を覚える。
子ども達が多くの情報を受け取った後、それを消化したり変化させたり、自分の創造力をプラスさせたりしながら、別の新しい何かを作り出し、それを多くの人々に送り出す側に成長してくれることが私の願いだ。好きなものを徹底して追いかけてほしい。全身全霊で遊んでほしい。そのエネルギーがいつか、世界を変えるかもしれないのだから。