香港子育て回顧録 -これまでも、これからも
白井純子
愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。
2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。
2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。
春の憂い
日本では4月が新年度のスタート月だ。学年が代わりクラス替えがあり、出会いや別れがある季節。そして、ママ達にとってはPTA委員選出という大きなイベントがある。小学校6年間を通して1度はいずれかの委員をしなくてはならないという暗黙の了解があり、半強制的に月に一度の会議に駆り出されたり、学校イベントの企画実行に携わったりすることになる。最近は仕事をしているママも多いのだが、それは免除の言い訳にはならない。平日昼間に行われる委員の定例会にパパが出席することはほとんどなく、全員ママだ。パパは仕事を優先できても、ママはPTAを優先しなければならないという日本社会における無言の圧力。そしてみんな不満に感じながらも黙って従う国民性。少し違和感を感じてしまう。
先日の委員選出では、赤ちゃんを抱いて二人の幼児を連れてきたママが委員になった。彼女は立候補だったから驚いた。委員の会議に参加している間、小さな弟妹の世話をしてくれる人がいるのかな?保育園に預けるのかなあ?と余計な心配をしてしまう。日本はメイドさんを雇う習慣はないので、じいちゃんばあちゃんが同居している、もしくは近くに住んでいるという環境でなければ、保育所などの施設を利用しない限り、委員会に出席する際には下の子を同伴するしかない。これはママにとっても下の子にとってもしんどい。
我が家は長男が中学生、次男が小学生なので、PTA委員選出のドキドキは2度やって来る。中学校の委員をする場合、会議が夜になることもあるらしく、夫が不在である事が多い我が家では、夜に子ども達だけで留守番をさせないといけない状況になってしまう。子ども達が学校に行っている間に参加できる委員ならまだしも、夜だったり週末だったりに数時間子ども達だけで留守番させることには不安がある。留守中の火災や地震、不審者の出現など、想像すると怖い。
香港の法律では16歳未満の子どもに一人で留守番させることは違法だと聞いた。これは少し異常だと思う。さすがに12歳過ぎたら、自立を学ぶことに重点を置いても良い気がする。一方、日本は幼児でも一人で留守番をする子が多い。帰国後直ぐに、次男と同じ幼稚園に通うお友達が一人で遊びにやって来たことがあった。5歳の小さな男の子が、約束もしていないお友達の家を訪ねてまわり、遊び相手を探している。交通事故や不審者との遭遇など、小さな子どもには危険が多いのは香港も日本も同じだ。驚いて家に招き入れ、帰りは自宅前まで送った。香港は少し過保護で、日本は少し放任過ぎる。
昨年まで3年連続で何らかの委員をしてきた私は今年度はプライベートの活動に集中するつもりだ。中学校のPTA委員は次男がなるべく大きくなってから引き受けるべく、目立たぬように息をひそめて…本音は「必然でない委員会は廃止を!ママの自己犠牲の上に成り立つボランティアは最小限に!」なのだが、出る杭は打たれる日本社会では、目立たぬように波風立てぬようにやり過ごすしかない。
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