香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

香港の未来

香港の未来

香港子育て回顧録 -これまでも、これからも

白井純子 

愛知県出身。大学では日本国文学科専攻。北京電影学院留学中に香港人である現在の夫と出逢う。長男を東京で、次男を香港で出産。

2014年夏に9年間暮らした香港から大阪に帰国。帰国後に保育士資格とチャイルドマインダーの資格を取得。

2019年夏から息子達の留学のためバンクーバーに滞在中。現在の関心ごとは「Sustainability」。

 


香港の未来

5年後、10年後、今回の香港での出来事が何という名で呼ばれているのかは分からないけれど、今後歴史の教科書に載るほどの事件だったことは間違いないだろう。自分が愛した街の変貌を目の当たりにして言葉を失った。もし、あのまま香港に住んでいたら、我が子が傷ついたり、命を落としたりするようなことになっていたら、私は正気でいられなかったはずだ。犠牲になった若者たちと、その家族たちを思うと心が痛い。

育ってきた環境や生活状況、思想の違いで、香港が大きく分裂してしまった。実際、何人かの友人と話すだけで、様々な意見があることに気づかされる。正義とは何か、社会とはどうあるべきか、世界が複雑になったことでその答えが一つではなくなり、誰も答えにたどり着けない。そして、「分断」という悲しいブームが世界中に広がっている。この世紀が終わる頃、人は今の時代を振り返り、何を思うのだろう。

「国」とは何か、「正義」とは何か、「自由」とは何か。それらは「犬」とは何か、「水」とは何か、「石」とは何かという質問とはまるで違う。姿形がない抽象的な概念は、みんなが共有しているようでいて、共有できているとは限らないもの。争いはこのような概念から発生することが多いように思う。人間の知恵が今までのレベルを超えることができなければ、自分たちが作り出した概念によって自分たちを滅ぼしかねない。私たちはそんなギリギリのところまで来てしまったのではなかろうか。

「世界」「時代」というスケールでものを考え出すと、頭の中の宇宙でビッグバンが起きそうになるので、大きく深呼吸をして自分の周りをゆっくりと見渡し、自分の存在を丁寧に確認してみる。この世界の片隅で、私は今日も生きている。昨日と同じように子ども達を学校に送り出し、部屋を片付け、ピアノの練習をし、そしてパソコンに向かっている。明日も来週も来年も、家族や友人を大切に思いながら、生きていられたら幸せだと思う。

昨年亡くなったスティーヴン・ホーキング博士は「人工知能」が人間を超える日が来ると予測した。それは悲観的な予想だったのだが、私は「人工知能」が人間を超えて、人間の代わりに世界を平和に治めてくれたらと考えている。人間は元々自分勝手な生き物だ。力を持てば、心が変わる。「人工知能」が人類史の全てを考慮し、人々が幸福に生きられる方法を導き出し、不公平や貧困などを回避できる世界が作り出せたなら、ホーキング博士の予測は人類にとって喜ばしいものになるだろう。

志の高い学生達が、生きてくれることを願ってやまない。あなたが死んでもこの世界は続くけれど、あなたが死ぬとあなたの世界が終わってしまう。生きて、新しい時代を見届けてほしい。

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